マッターホルン周辺を2週間に渡って歩いてきた今年の夏のアルプス滞在記。今回は第一ベースのシャモワからいよいよマッターホルンの麓の村ブレイユ=チェルヴィニアへ。

■人口100人に満たない小さな山間の村、アルプスを歩きつくしたプロたちが惚れ込むイタリアの秘密の避暑地「シャモワ」

 マッターホルンはイタリア語で「チェルヴィーノ(〝鹿の角〟の意味)」というが、ここチェルヴィニアはまさにチェルヴィーノの足元にあり、登山口となっている。冬季はアルペンスキーのメッカとして世界中のスキーマニアが集う場所として名高い。

 人口700人のこの村に毎冬12万人ものスキー客が訪れるのだそうだ。スキーのメッカと言われるだけあり、イタリア国内で唯一、夏スキーが楽しめる場所としても知られている。スイス国境にあるツェルマットのスキー場へは、チェルヴィニアから出ているロープウェイで簡単にアクセスできるのだ。

 夏季にチェルヴィニアに滞在する登山・スキー客は冬季の4分の1に過ぎない、と聞いて正直びっくりした。なぜなら、チェルヴィニア周辺には無数の登山・ハイキングルートがあり、夏だからこそアクセスできる絶景スポットが目白押しで、こんな素晴らしい景色が見られるチャンスを放っておくなんて勿体無いと思ったからだ。今回は数ある中から、山歩き初心者でも行けるマッターホルン周辺の4つの絶景スポットをご紹介しよう。


マッターホルンの玄関口ブレイユ=チェルヴィニア

■1.ロープウェイの終点はスイス国境「プラトー・ローザ/ Plateau Rosà」

 初心者でもお年寄りでも子どもでも、誰でも簡単に行ける絶景スポットの代表が標高3,480mのプラトー・ローザ。標高2,050mのチェルヴィニアの村はずれから出ている『チェルヴィーノ・スキー・パラダイス』の3つのロープウェイを乗り継いで行くだけで、スイス国境の村ツェルマットのスキー場まで一気に登ることができる。

 村の中心のとんがり屋根の教会がある広場からロープウェイ乗り場まで、その名も「フニヴィア(=ロープウェイ)通り」をえっちらおっちら登って行くと、ロープウェイのチケット売り場がある。売り場には3つの中継ポイントそれぞれの天気予報が掲示されているので、降りたい場所の天気予報をチェックしてからチケットを買う。

 ロープウェイの始点と終点では1,500mの標高差があり、出発地点が晴れていても頂上は大荒れ、ということも十分あり得るからだ。この日は朝早起きして出かけた甲斐あって、頂上も晴天マークが出ていた。チケット売り場のおばちゃんも、「上もお天気は上々だから大パノラマが楽しめるわよ」と太鼓判を押してくれた。


第一中継地点プラン・メゾン(2,500m)までは「テレカビーナ」と呼ばれる小型ロープウェイで

 ロープウェイの切符はA・B・Cそれぞれの区間ごとに購入できる。各乗り継ぎ駅を拠点にした登山ルートもたくさんあるので、途中までロープウェイで登って歩いて降りてくる人もたくさんいるが、雪山のパノラマを楽しむだけならロープウェイで往復するという楽チンコースがオススメ。

 終点のプラトー・ローザで降りると、すぐ目の前にマッターホルン山頂が大迫力でそびえているのが見える。プラットホームは直接ゲレンデに通じているので、隣の山小屋で大パノラマを眺めながらカフェを楽しみたい人は、雪の上を歩ける靴と防寒着の装備を忘れずに。

最後は大型のロープウェイで一気に3,500m地点へ

イタリア・スイスの国境線と背後にそびえるマッターホルン山頂

イタリア側のアルプスの眺め。遠くにモンブラン、グラン・パラディーゾの山頂が見える
こちらはスイス・ツェルマット側のアルプス山脈。4,000m級の山が連なる壮大なパノラマが広がる