■嵐山本線で太秦広隆寺から嵐山へ

京都の人気観光エリア「嵐山」までを雅な色の路面電車で訪ねる旅【関西鉄道路線周辺曼荼羅 vol.02「嵐電嵐山本線」】

広隆寺の門前を走る嵐電

 関西三大路面電車のひとつである嵐電(京福電鉄嵐山線)は、太秦広隆寺駅を出て広隆寺の門前を過ぎると、そこから終点の嵐山駅まで専用軌道(路面電車)となる。この間の大きな見どころの1つといえるのが、車折(くるまざき)神社だろう。

 創建は1189年で、平安時代後期の学者である清原頼業(よりなり)の没後、清原家の領地であったこの地に建てられたという。祭神も清原頼業であり、学業成就や試験合格のご利益があり、とくに約束を違えないこと、つまり契約の履行や恋愛・結婚の成約が守られるとされている。 

 場所は車折神社駅からすぐ。道をはさんだ目の前に鳥居が立っている。

車折神社正面鳥居

■芸能人の玉垣がズラリ!

 この神社の最大の特徴といえるのが、整然と並んだ朱塗りの玉垣だ。ただし、これは本社ではなく、境内社である芸能神社にまつわるものだ。

 芸能神社の祭神は、天照大神が天岩戸に隠れた際、岩戸の前でダンスを披露した天宇受売命(あめのうずめのみこと)であり、芸能にご利益がある。そのため、有名無名を問わずに芸能人が玉垣を奉納し、その数約4000枚にのぼるという。境内をぐるりと囲み、参道にも林立する玉垣の光景は、まさに圧巻である。

境内に林立する芸能神社の玉垣
たくさんの芸能人が奉納した玉垣

 車折神社駅の次は、紅葉の名所である鹿王院の最寄りである鹿王院駅。その次が嵐電嵯峨駅だ。この駅の近くには第98代、南朝3代の長慶天皇の御陵があり、さらに住宅街を抜けたところに祀られているのが安倍晴明(あべのせいめい)の墓所である。

安倍晴明の墓所

 晴明については、生誕地とされる安倍晴明神社(大阪市阿倍野区)や屋敷跡の晴明神社(京都市上京区)があり、とくに晴明神社は観光客でにぎわう人気のスポットだ。しかし、墓所は民家に囲まれた狭い空間にポツンとあり、日本随一の陰陽師とされた晴明の墓にしては、あまりにも寂しいといわざるを得ない。

 嵐電嵯峨駅の次は終点の嵐山駅。駅の前は嵐山のメインストリートであり、土産物店や飲食店が軒を連ね、構内にも「嵐山駅はんなり・ほっこりスクエア」という商業施設がもうけられている。駅の外観も、京都で1、2を争う人気観光地にふさわしいつくりとなっている。

嵐電嵐山本線嵐山駅の駅舎
嵐山駅はんなり・ほっこりスクエア

 余談になるが、「はんなり」という京ことばは「華あり」もしくは「晴れなり」がなまった言葉ともいわれ、本来の意味は「明るく上品で華やかな姿」のこと。「ほっこり」は、適度な運動や仕事からくる「心地よい疲労」を表現したものだ。「はんなり・ほっこりスクエア」は明るく華やかではあるが、心地よい疲労をえられるかどうかは、実際に訪ねてたしかめていただきたい。