先日、とあるキャンプ場に焚き火の撮影に出かけたのだが、結局焚き火をせずに帰ってきた。その理由は、「風」である。

 天気ばかりに気をとられて、うっかり風速予報を確認していなかったのだが、その日の風速は5m/sほど。この時期は落ち葉の量が半端なく、そのうえ燃えやすい杉の葉があたり一面を覆っていたので、ちょっとの火の粉で引火してしまう恐れがあった。

着火に新聞紙や葉っぱを使うのは危険!

 私は「焚き火マイスター」を名乗って仕事をしている以上、火事を起こすわけにはいかない(名乗っていなくてもだが)。それこそ炎上して叩かれてしまう。撮影スタッフに相談し、焚き火のシーンは後日追撮することになった。撮影スタッフからすれば、仕切り直すカロリーと手間を考えると、無理にでも撮ってしまいたかったはず。しかし、この判断は間違っていなかったと今でも思う。

 アウトドアを楽しむうえで、私は『諦める勇気』と『早めの決断』を肝に銘じている。万が一を考えると、その場の空気が悪くなることだけで済むなら、焚き火をしないことを選択することもある。

 と前置きが長くなったが、今回はちょっとした風の豆知識を覚えておけば、焚き火をより上手に操れるようになるというお話。

■見えない風を煙で見る

あまりに煙が流れるようなら注意が必要

 焚き火から煙がモクモクと出ている状態は不完全燃焼を起こしている証拠だが、風速をチェックするのにはちょうど良い目安になる。

 例えば、高速道路上にある吹き流しが少し風に流れるくらいの時は、風速が約3~5m/sあるとされている。吹き流しは重さがあるので、煙を目安に見る場合、それよりも風速は少し弱く計算して約1~2m/sほど。このくらいが自然と焚き火台のなかに空気が流れ込み、焚き火が燃えやすいベストな風速である。

 しかし、煙が真横に流れるようものなら、風速は5m/sを超えている証拠。これくらい風が強いと、火の粉が飛んで行く可能性が高い。特に葉っぱや新聞紙を焚きつけに使うと、焚き火台から火種が逃げ出し、危険な状況だ。

煙が停滞しているのは、まだしっかり燃えていない証拠でもある

 ちなみに、無風の時に煙が停滞してしまうのは、焚き火が完成されていない証拠。しっかり燃え始めると焚き火の炎から上昇気流が生まれ、煙はスゥ~と真上に上がっていく。この状態は熱か酸素が足りていないので、焚き火の世話をしてあげる必要がある。