紅葉の季節は登山の季節。しかし同時に熊の被害が多くなる時季でもある。環境省によると、昨年度は人身被害が87人、死亡事故が5人だった。過去15年間で死亡事故は最多件数となっている。今回は熊による事故を未然に防ぎ自分自身を守るために、熊の生態と対策を解説する。

参考URL:クマ類による人身被害について[速報値]

■熊に出合わないための対策

アウトドアを安全に楽しむために、熊に関する知識を身に付けよう

 日本に生息する熊は、ヒグマとツキノワグマの2種類。ヒグマは体重150~400kgと大型で、ツキノワグマよりも比較的攻撃的と言われており、北海道のみに生息している。ツキノワグマは40~120kgとヒグマより小型で、臆病な性格で本州に生息している。

●熊とは出合わないことが大切

 基本的に熊は人間と接しないよう生活しており、好んで人里に出てくることは稀だ。人里に出てくるような熊は、えさ不足や、熊同士の縄張り争いで敗れて縄張りから押し出された個体であると考えられ、好んで出てきているわけではないのだ。

 人身事故は、そういった熊と人が偶然鉢合わせし、熊が驚きパニックになることで起きることが多い。熊の生態を理解し、「偶然出合わないようにする」ことが大切だ。

●熊鈴は基本アイテム

 大前提として「これをやれば絶対に大丈夫」という対策はない。しかし、備えておくことで、遭遇する確率は下げられる。自分の命を守るために、やれることはしっかりやっておこう。

 一番オーソドックスな対策は、熊鈴だ。熊は聴覚が優れているので、熊鈴を付けて歩いていれば、熊が先に気付いて逃げて行ってくれる。熊鈴はアウトドアショップにいけば簡単に手に入る。ラジオなどを流しながら登山することも有効的だ。

●食べ物や荷物の扱いは要注意

 熊の嗅覚は犬よりはるかに優れており、食べ物の匂いを遠くからでも察知できる。登山客が捨てた食べ物の味を覚えてしまった熊は、人に対する警戒心が薄れて人に寄ってくる場合がある。自分の周りに食べ物の匂いを漂わせないようにしよう。ジップロックなどの密閉できる袋を携帯し、持参する食べ物やその食べ残しは匂いが漏れないよう工夫しよう。

 そして、一度熊が漁った食べ物や荷物には、絶対に手を出さないでほしい。熊は自分の獲物に非常に強い執着心があり、「自分の獲物を奪う邪魔者」と認識すると、食べ物の匂いなどに関係なく邪魔者を排除するために襲ってくる。仮に熊がいなくても、熊の餌場だと思われるような場所に残っているものを持ち去ることも厳禁だ。