富士山の裾野、風光明媚な「忍野」をゆったりと流れる桂川。ここでの釣りが解禁してから約2週間経った。湧水を集めた流れは澄んで魚たちも丸見えだ。メジャーなだけに激戦を生き残る魚たちは“スレ”ていて釣るのはなかなかどうして難しい。「見えている魚は釣れない」なんて言葉も頭をよぎるが、そこかしこでライズを繰り返されるとすっかり夢中になってしまうのはフライフィッシャーの性(さが)か……。

■フライ・ルアーフィッシングの聖地! 「忍野」地区

富士山を望む桂川上流部、「忍野」。臼久保橋付近

 相模川・桂川の上流部である「忍野」は、すぐ上流には天然記念物である湧泉群「忍野八海」があり、富士山の伏流水に水源を発するたおやかな清流での釣りが魅力で、多くの釣り人に大人気のエリアだ。

 約2kmにわたってフライ・ルアーフィッシングのみとなっており、ヤマメやイワナ、ニジマス、ブラウントラウトといった鱒たちが狙える。湧水のおかげで一年を通じて水温が安定していて魚たちの活性もいい。緩やかに蛇行するスプリングクリークが林の中を流れる雰囲気も魅力。管轄は忍草(しぼくさ)漁業協同組合。

■丸見え! ライズを繰り返す魚たち

臼久保橋から覗くと魚影が見える

 まずは臼久保(自衛隊)橋から川を覗く。川床まで見通せるので魚たちも丸見えだ。魚影も濃く、大きい魚(鯉もいるが)も何本もいる。平日にもかかわらず橋の上流・下流には釣り人がかなり入っている。9割くらいがフライ(フィッシャー)のようだ。

 流れに沿って続く道を歩いていくと、混んではいるがポイントはところどころ空いている。釣り人のプレッシャーが少ない箇所では散発的にライズ(魚が水面付近で捕食するときの行動)も起こっている。

 ちなみに「忍野」では川に入らず岸から釣るのが通例。そのため、周囲の木々の枝が邪魔になるところもあるので、ロールキャストなどオーバーヘッドキャスト以外の投げ方を磨いておくと有利かもしれない。季節が進むと葉も生い茂り、さらに難易度は増す。ランディングネットは、柄の長いものがないと魚を取り込めない場所も多い。

この日釣れたなかで一番の大物は最初の一本だった

 流心と脇の緩衝帯の隙間に大きめの魚影を見つけ、フライを水に馴染ませながら流し込む。3度目、力強い手応えのアタリと共に魚がかかった。随分苦戦しながらも手元に寄せてきてみると、見込んだより大きめで50cm近いニジマスだった(1本目に釣れたこの魚が、結局この日は1番の良型だった……)。