先週末(10月2日〜3日)は紅葉と天気のタイミングが見事に一致した。日曜日に入山したのだが、それでもかなりの賑わい。涸沢カールではテント村が形成されていた。穂高稜線に近いあたりはピークを過ぎていたが、ちょうどカール内は、色づきの最盛期を迎えていた。険しくそそり立つ穂高の山並みと雲ひとつないピーカンの青空とのコントラストが素晴らしかった。
「涸沢の紅葉見ずして穂高を語るなかれ」と古くから言われるほどだが、実は毎年同じ紅葉具合なわけではない。降水量、日照時間や寒暖の差、霜など諸条件により、秋の彩りはその仕上がりかたが違う。
今年は台風の影響もほとんどなく、葉の量は多めでダケカンバの黄色い輝きが眼に眩しいほどだった。ただナナカマドの赤が弱いせいか、やや生彩が足りない印象もある。それでもカール一帯は錦秋の圏谷となり、「一生に一度は見たい」いや、何度でも見たい涸沢カールの紅葉がそこにあった。そのきらびやかな様子に登山者たちの表情も明るく輝いていた。
涸沢カールからは前穂北尾根を経由し岳沢へ降りたが、稜線付近の足元にもまだ草紅葉がわずかな色を残しており、奥明神沢や岳沢小屋周辺の紅葉も見事な色彩を見せていた。
標高の高いエリアでは紅葉の最盛期は過ぎていくが、紅葉は前線のように徐々に本谷橋、上高地へと標高を下げていく。横尾山荘付近のカラマツの黄金色の紅葉は、「知る人ぞ知る」ツウの楽しみだ。この頃になると観光客や登山客も減り、静かな山を楽しむことができる。短い秋だが、美しい景色を楽しむチャンスはまだまだ目白押しだ。