7月に入り、梅雨明けの知らせが届きそうなこの頃。筆者は梅雨の貴重な晴れ間を探して全国津々浦々歩き回っているが、晴れ間だけが山の目的じゃないのは皆さんも同じではないだろうか。

 南アルプスでも、梅雨真っ只中の7月初旬から一斉に高山植物が咲き始める。夏山がもっとも美しい季節は、梅雨明け前にいつの間にか始まっているのだ。

 現実的には、天気予報に傘マークしか並ばない7月前半〜半ばの予報に絶望する年も多い。しかし、その間に花々は人知れず最盛期を迎え、登山者が賑わいをみせる頃には、お花畑に瑞々しさがないこともあったりする。

 さて、果たして今年はどうなるだろう。

■梅雨時に見頃を迎えるお花畑とは

梅雨時は森歩きが最も楽しい季節。千枚小屋手前の駒鳥池周辺は苔やシダ植物が美しい

 毎年、7月前半のこの時期になると、会いに行きたくなるお花畑がある。場所は南アルプスでも最奥のエリア「荒川三山」の前岳南東斜面だ。アプローチを含め、3泊4日の山旅の途中、2日目にお目見えするお花畑である。

 南アルプスのどこを探しても、ここ以上のお花畑はないと言い切れるほど、広大な斜面を埋め尽くす花々に圧倒される。初めて目にした年は、梅雨を忘れさせる快晴の中、想像を遥かに上回る大きさのお花畑に興奮しっぱなしで、夢中でシャッターを押して回った。

 あれから毎年、7月の晴れ間を探して訪れているが、最初に見たような瑞々しい最盛期のお花畑には出会えていない。今年もMTBに跨り、椹島(さわらじま)までの林道をアプローチしてでも会いに行くつもりだ。

 2021年も、荒川三山や赤石岳を含む東海フォレストの運営する山小屋が営業を取りやめてしまい、椹島までの林道バスも運休が決まっている。幸いにも、今年は椹島や二軒小屋までの、徒歩や自転車のアプローチは許可されたようだ。

 今回は沼平から自転車のアプローチを含めると、最短で2泊3日、椹島から荒川三山の核心部に広がるお花畑を巡り、赤石岳を登って、椹島へと下山する周回ルートを紹介しよう。