北アルプスの最南端に位置する乗鞍岳は、3,026mの主峰「剣ヶ峰」をはじめとする23の峰と7つの池(湖)、8つの平原で構成される雄大な独立峰だ。この山の一番の特徴は、標高2,702mの畳平までシャトルバスで一気に入れてしまうこと。そのため、夏から秋にかけての登山シーズン中は多くの登山者でにぎわっている。
シャトルバスの運行期間は、長野側、岐阜側ともに10月31日まで。だが、10月半ばを過ぎると降雪や寒さによる路面凍結のために運休になることもあるという。
我々取材チームが乗鞍岳に向かったのは、シャトルバス運行終了直前の10月下旬。時期的に雪の心配もあったが、登山当日は幸運にも雲ひとつない“ど快晴”の青空が広がり、バスが運行されたのはもちろん、山の上からは360度の大パノラマを望めた。
■約90分で大展望の頂きへ!
長野県側から畳平に行くには「乗鞍エコーライン」を走るシャトルバス(事前予約制)に乗らなければならない。朝、乗鞍観光センター前のバス乗り場に向かうと、すでにバスを待つ登山者の行列ができていた。7時発の便に乗り、バスに揺られること55分。あっという間に畳平のバスターミナルに到着する。
畳平からは鶴ヶ池脇のゆるやかな砂れきの道を行く。広々とした道はそのまま肩の小屋方面まで続いているが、せっかくなので富士見岳に寄り道。15分ほど登ると山頂に着く。天気が良く、空気が澄んでいるので、周囲のすべてが見渡せる。富士見岳を下ると広い道に合流し、肩の小屋や宇宙線研究所観測所が建つ広々とした鞍部へと向かう(肩の小屋の営業期間は例年10月上旬まで。鞍部の公衆トイレは10月下旬まで利用可)。
そこからはハイマツの間を行く登山道となり、傾斜も増してくる。我々は今回、北アルプスの別の3,000m峰を登ったあとに乗鞍岳を訪れたこともあり、剣ヶ峰への急登もさほど苦にならなかった。けれど、バスでいきなり標高2,700m以上の高さまで上がってきた人は、高度に体が慣れないまま歩きはじめることになり、薄い空気の中でのこの登りもそれなりにしんどいはずだ。
バスやロープウェイで高所までアクセスできる山は、その手軽さから「初心者向き」とされることも多い。だが、高山病や天候の急変など、高山ならではのリスクがあることは頭に入れておいた方がいいだろう。
岩がゴロゴロと転がる登山道を登りきって尾根上に出ると、そこから先は岩れきの道となる。尾根の向こうには鮮やかなコバルトブルーの権現池が見える。頂上小屋を過ぎ、さらにもうひと登りすると剣ヶ峰の山頂へと到着した。
見晴らしのいい山頂からの展望をよく「360度の大パノラマ」と表現するが、剣ヶ峰からの眺めはまさにその言葉どおりだった。北には槍ヶ岳や穂高連峰をはじめとする北アルプスの山々が連なり、東には八ヶ岳、南には御嶽山、南東には中央アルプスや南アルプス。どこに目を向けても、日本を代表する名峰の数々が見渡せた。
山頂の「乗鞍本宮頂上本社」が開いていたので、お参りをして、登頂の記念に御朱印とお守りをいただいた。雷鳥守は、ライチョウの生息地である乗鞍岳らしい、かわいらしいお守りだった。