今年は8月後半から長雨に悩まされ、予定していた登山が次々とキャンセルに。天気予報と睨めっこする日々の中、ふと思いついた「長野の山がダメなら、晴れる東北へ行けばいい」と。思い立ったのは出発前日。そんな”フッ軽な“予定変更から始まった女2人の東北山旅をお届けしたい。
2024年に火山活動の高まりを受け、一部で入山規制が続いていた岩手山。規制の緩和を受け、「今年こそ登りたい」と思っていた日本百名山のひとつ! せっかく東北まで行くなら狙いたいのが秋の紅葉。岩手山を登り、下山飯を味わって、翌日は栗駒山の「神の絨毯」へ。我ながら欲張りな計画だ。
ところが、晴れを求めてやってきたはずの岩手山で待っていたのは、青空ではなく、どんよりとした雲と風速20メートルを超える爆風だった。
■晴れを追いかけて岩手山へ
1日目の目的地は岩手県最高峰、標高2,038mの岩手山だ。盛岡の街からもその大きな姿を望むことができ「南部片富士」とも呼ばれる岩手県を代表する山。日本百名山にも選ばれている。
ところが、向かう道中から岩手山はすっぽりと雲の中だった。「晴れを求めてここまで来たんだけどな……」思わず2人で笑ってしまう。
歩き始めると、標高を上げるにつれて風も強くなってきた。それでも、山肌には秋の色が広がっていた。赤、黄色、オレンジ。青空がなくても、東北の山はしっかりと秋を迎えている。華やかな紅葉登山を想像していたはずなのに、気づけば爆風と向き合う修行のような登山に。それでも山頂を目指したくなるのが、登山好きの性なのかもしれない。私は百名山ハンターでもあるしね。
■岩手山の厳しさと美しさ
8合目にある避難小屋で一旦休憩することにした。温かいカップラーメンが体に沁みる。山頂方面から戻ってきた方々が口々に「上は風が大変だった」と興奮気味に教えてくれる。ますます行くのが嫌になる私。ところが、小屋を出ると強風だけれど青空になる時間が増えている。
「これはお山がおいでと言っている……?」と感じて、ダウンも着込み身支度を整えて意を決して進んだ。もちろん撤退の選択肢も考えていた。
お鉢へ出たら、先程までとは比べ物にならない強風だった。体を持っていかれないよう耐えながら前へ進んでいく。山頂に着いて写真を撮ろうとしても持っているスマートフォンまで飛んで行きそうになるほどだ。しかし、突然さっきまで私たちを翻弄していた風が、少しずつ穏やかになっていく。そして雲の切れ間から、どんどん青空が見え始めた。
「え、晴れてきた!」 ほんの少し前までのどんよりとした世界が嘘のようだった。光が差し込むと、岩手山の景色が一気に立体的になる。火山らしい荒々しい大地。大きく広がる火口。その向こうに広がっていく青空。爆風のなかを歩いてきたからこそ、この瞬間のうれしさは大きかった。岩手山の厳しさと美しさ、その両方を一日のなかで味わうことになった。