東京都奥多摩町(おくたままち)に位置する鷹ノ巣山(たかのすやま・標高1,740m)と六ツ石山(むついしやま・標高1,479m)は、奥多摩を代表する長大な尾根道「石尾根(いしおね)」上にある山である。
鷹ノ巣山と六ツ石山、どちらも奥多摩駅周辺から日帰りで登れる山だが、今回紹介するコースは歩行距離約15.1km、累積標高差約1,518m、行動時間は休憩を含めて8時間前後となる。標高差・距離ともに大きく、気軽な低山ハイクというより、十分な体力と経験が求められる本格的な縦走登山である。
縦走路である石尾根は、ブナやカラマツ、広葉樹の森が広がる静かな尾根道が魅力だ。秋には樹林帯が黄色や橙色に染まり、標高を上げるごとに変わっていく紅葉の表情。観光地の紅葉名所とは異なり、深い山の中で秋を味わえるのが大きな魅力である。
今回のコースは、水根(みずね)バス停を起点に、水根沢(みずねざわ)林道方面から水根山へ登り、鷹ノ巣山に到達。その後、石尾根をたどって城山、将門馬場(まさかどばば)、六ツ石山へと縦走し、六ツ石山登山口を経て、水根バス停へ戻る周回ルートである。
実際の山行データは、距離15.1km、累積標高差は登り約1,518m、下りが約1,511m、行動時間は7時間40分。休憩を含めると長時間行動となるため、早出が基本となる。特に秋は日没が早く、午後になると気温も下がりやすい。ヘッドライトや防寒着、十分な水と行動食を準備しておきたい。
●水根バス停からの早出がおすすめ
登山口となる水根バス停へは、JR青梅線・奥多摩駅から西東京バスを利用。奥多摩駅は新宿方面から電車でアクセスできるため、公共交通機関を使った日帰り登山も計画しやすい。ただし、奥多摩駅から奥多摩湖方面のバスは本数が限られるため、往路・復路ともに時刻表を事前に確認しておくことが重要である。
マイカーの場合は、奥多摩湖周辺や水根周辺の駐車場を利用。紅葉シーズンの週末は奥多摩湖周辺の観光客も多く、駐車場が混雑する。登山の行程も長いため、できるだけ早い時間に到着しておきたい。
【水根バス停から鷹ノ巣山・六ツ石山縦走コース】所要時間
水根バス停(0:00)→ 水根山(3:30)→ 鷹ノ巣山(4:00)→ 城山 (4:50)→ 六ツ石山(5:40)→ 水根バス停(7:40)
歩行距離:約15.1km
累積標高差:登り 1,518m、下り1,511m
合計所要時間:7時間40分
■紅葉の水根沢から石尾根へ、鷹ノ巣山と六ツ石山を巡る奥多摩ロング縦走
今回歩く水根周辺から石尾根にかけてのエリアは、奥多摩らしい深い樹林が広がる山域である。登山道は比較的整備されているものの、序盤から長い登りが続くため、一定のペースを保ちながら歩くことが大切だ。
奥多摩はツキノワグマの生息域でもある。過去に人身事故も起きているので十分な注意と対策が必要。特に早朝や夕方、沢沿いや見通しの悪い樹林帯で遭遇する可能性が高いとされている。クマ鈴や携帯ラジオ、熊避けスプレーを携行したい。また、単独行はできるだけ避けるようにしてほしい。さらに食べ物の匂いが外に出ないよう管理することも大切。人の多い観光地とは違い、静かな山域を歩くからこそ、自然への配慮と安全意識を持って行動したい。
■沢音に導かれて始まる、奥多摩らしい静かな登り
水根バス停を出発し、まずは水根沢林道方面へ向かう。序盤は奥多摩湖周辺の落ち着いた雰囲気を感じながら歩き始める。湖畔の静けさから山道へ入ると、次第に沢音が近づき、奥多摩らしい深い森の中へと景色が変わっていく。
水根沢沿いの道は、木橋や沢筋の景色が現れ、水の流れと苔むした岩、落ち葉の積もった登山道が秋山らしい。
ただし、雰囲気は穏やかでも、長い登りが続き、標高差を一気に稼ぐため、序盤で無理をすると後半に響く。呼吸を整え、足を小さく置きながら、淡々と高度を上げていくのがよい。
森の中では、杉林や広葉樹の樹林帯が交互に現れる。秋には足元に落ち葉が積もり、斜面の木々も少しずつ色づいていく。沢沿いの涼しさから、標高を上げるにつれて空気が変わるのもこの区間の面白さだ。水根山に近づくころには、すでにしっかり歩いた感覚があり、今回のコースの手ごわさを実感するだろう。
■長い登りの先に待つ、奥多摩屈指の展望峰
水根山を過ぎると、いよいよ鷹ノ巣山へ向けた登りが本格化する。ここまででも十分に標高を上げているが、山頂まではまだ気を抜けない。周囲の森は次第に明るくなり、場所によっては紅葉した木々やススキが秋らしい風景を見せてくれる。
鷹ノ巣山へ近付くにつれて、樹林帯の雰囲気は少しずつ開放的になっていく。ガスが流れる日であれば、尾根の先が白くかすみ、晴れ間がのぞけば奥多摩の山並みが姿を見せる。天候の変化が景色の印象を大きく変えるのも、標高1,700m級の山らしいところだ。
鷹ノ巣山山頂は、今回のコースの最高地点であり、最も大きな達成感を味わえる場所である。晴れていれば、奥多摩の山々はもちろん、富士山方面の展望も期待できる。雲や霧が多い日でも、草原状の山頂と流れるガスがつくる景色は迫力があり、秋山らしい荒々しさを感じさせる。
ここでしっかり休憩を取りたいところだが、まだ行程は半分以上残っている。長居しすぎず、体を冷やさないよう注意したい。鷹ノ巣山はゴールではなく、ここから石尾根縦走が始まる。体力と時間を確認し、余裕を持って次の区間へ進みたい。
体力や時間に不安がある場合は、六ツ石山へ進まず、往路を水根バス停へ引き返すほうが距離を抑えられる。山頂到着時の時刻や疲労度を確認し、無理のないルートを選択しよう。