■「美女峠」へ向けて快適なグラベルライド
ここからは道もしっかりとしており、気持ちのいいグラベルライドを楽しめます(車止めがあったくらいなので自動車も走れる?)。前半が難路だっただけに快適さを一層感じます。しかも傾斜も緩いところが多く、後半に向けては下りが続くグラベルロードにご機嫌です。場合によってはこちら側だけ、つまり今回のゴールに設定している「美女ヶ池」からの往復ルートの方が一般的なのかもしれません。
途中に絶景ポイントがあるらしいですが、当日は薄日が差すもののあいにく雲が多く、乗鞍岳や北アルプスの展望は望めませんでした。

ひっそりとした森のなかを進んでいると、件の比丘尼の屋敷跡がふいに現れました。その昔、この付近には八百歳を過ぎてもなお若々しい比丘尼が住んでいて、目も覚めんばかりの美女であったため「美女峠」「美女ヶ池」と言われるようになったという伝説が残されています。

心地よい振動を感じながら下っていくと森はひんやりとした杉林となり続いていきます。ただ、轍には水たまりがしっかりと残っており、とても避けきれません。すっかり泥にまみれ水浸しになって“水も滴る”状態でしたが、美女どころか誰一人すれ違うことなくグラベルロードは終わりました。

グラベルロードに別れを告げ、鋭角に曲がって車道を走り、美女峠に向かいました。しかし地形図に載っている割にはとくにそれらしい標識もなく、若干肩すかしをくらった気分です。ときおり香る藤の花の芳香にだけ色っぽさを感じました……。
ここは「飛騨ぶり街道」と呼ばれています。日本海でとれた魚が塩漬けにされ高山へ送られ、この街道を通って信州へ運ばれ“飛騨ぶり”と呼ばれていたことから名付けられたようです。

そのまま車道を下っていけば高山の街へと戻れるのですが、Uターンして美女ヶ池へと向かいました。ちょうど日曜日ということもあってか、山中の池の畔の公園は、釣り糸を垂れる釣り人、カップルやファミリーなど、老若男女でおおいに賑わっており高山市民憩いのスポットとなっているようでした。
■「美女街道」を走り、高山の街へ

「美女街道」という名前に惹かれ、久々野経由で国道361号線に向かいました。田園地帯を抜けたら途中にある「美女街道展望台」で景色を眺めながらひと休み。乗鞍岳は相変わらず雲のなかでした。
行き交うのは車ばかりの美女街道。長い「飛騨ふるさとトンネル」を抜けたら江名子を通って高山の街までサイクリングです。行きに頑張った分、ほとんどが下りで楽々と高山の街へと戻ることができました。距離にして約16km、所要時間は休憩も入れて1時間40分ほど。

街中に戻ってくると美しい夕日が迎えてくれました。宮川沿いを歩く観光客の多くは外国人で、山から下りてきたばかりの身には異世界に迷い込んだような不思議な感覚がありました。
四方を山に囲まれた高山、街から延びる道の先にあるグラベルロードはまだまだあります。今度はどこを訪ようか、地形図と睨めっこするのが楽しみになりました。