■美女山登山



2月下旬、筆者が道の駅 丹波マーケスにたどりついたときは、あいにくの吹雪であった。登山を断念し、帰宅を決意。すると突然雪が止み快晴になったため、女神さまが呼んでいると思い、登山を決行した。
黒尾橋ルートは須知川(しゅうちがわ)に架かる黒尾橋の脇に登山口があり、ゲートを開けて登山道に入る。そして、川沿いの細い道を登り杉林を抜けていく。
杉林を抜けると尾根まで急登が続き、ここからはしっかり積雪していたため、軽アイゼンを使用した。軽アイゼンをつけて歩くと、足の裏に踏み固められた雪の塊がついてくる。すると足が重くなり、雪の塊が邪魔で歩きにくい。そのため、頻繁に足裏の雪を落としながら歩くこととなり、ペースダウンに加え体力も奪われてしまう。筆者の場合、積雪時でも標準タイムの往復2時間弱だったが、積雪がなければもっと速いペースで往復できたであろう。




ちなみに積雪のため、登山道がどこにあるのか全くわからない状態だったが、不安はまったく感じなかった。なぜかというと、かなり短い間隔で道標のピンクテープがつけられていたためだ。そのピンクが雪の中では非常に目立っていてルートが一目瞭然。これに登山アプリを組み合わせると、かなりの安心感があった。

尾根までの急登は中間地点まで来ると、眺望のよい展望台がある。急登を登り切り尾根道に到達すると、天気が急変し吹雪となった。ここは地図上では中間地点に見えるが、急坂と緩い坂では距離がまったく違う。吹雪ではあったが、山頂はすぐだった。
山頂では期待していた景色が吹雪で真っ白で何も見えなかったのが残念。景色がよいと聞いていただけに、心残りである。山頂にイノシシの駆け回った跡が残っていたのが印象的だった。
■美女山のご利益
元々、美女山からの下山は大圓寺ルートという別ルートを計画していた。しかし、登山アプリがあっても積雪時は道がわかりにくい。道標のピンクテープがどれだけあるかもわからない。そこで安全を第一に考え、自分の足跡をたどって黒尾橋ルートを下山することにした。
吹雪の中を歩いていると、いろいろなことが頭に浮かんでくる。雪女は美女だと相場が決まっているから、女神さまは雪女なのかもしれない。雪女に出会って恋愛運爆上げというのなら、女性は雪男に出会って恋愛運爆上げになるのか。いや雪女は美女妖怪であり、雪男は未確認生命体。そもそも雪男は雪女の反対語ではないし、山神様は美女なのだ。ということは、やはり美女山は男性限定のご利益なのかもしれない。
考えがまとまった頃には登山口に到着した。そして山の下では晴れていたのである。吹雪いていたのは山の上だけだったようだ。この日の行程は、黒尾橋登山口から山頂までの往復で2時間弱であった。
ともあれ、既婚者に恋愛運は関係ない。美女山のご利益は自分には関係ないことだ、と思いながら帰宅すると、珍しく妻の機嫌がよかった。友人にちょっと高めのおいしいお菓子をたくさんいただいたらしい。この日は筆者も猫も、妻に怒鳴られることなく、一日を終えたのである。
「恋愛運を必要としない既婚者が美女山に登るとどうなるか」という実験結果は、妻の機嫌がよくなる出来事が起こるということだった。