さまざまなアウトドア用具を手掛けているエバニューでは、森林限界を超えない、比較的に傾斜が緩い山での使用を想定した「10本爪アイゼン(EBY017)」を販売している。一般的に10~12本爪のアイゼンは森林限界を超える傾斜が急な山で使用されるが、エバニューの「10本爪アイゼン」はそうした冬期登攀用ではなく、あくまで“軽アイゼン”として設計されたもの。10本爪なのに軽アイゼンというこの用具はどんなシーンに適しているのか。そのポイントを紹介していこう。
■軽アイゼンだけど、10本爪の理由

アイゼンは冬山装備の必需品のひとつであり、10~12本爪のものは足裏のほかに、つま先側から爪が突き出ていて、この前爪を雪面に突きさすことで斜面が登りやすくなることが特徴だ。
しかし、エバニューの「10本爪アイゼン」は前爪を使って登ることは想定しておらず、前爪がシューズの先からあまり飛び出さないように設計されている。アイゼンの歩行は慣れないと爪をパンツの裾などにひっかけて転んでしまうことがある。そうした危険を軽減するためにあえて爪を短めに設定しているのだ。

登山道に雪があるようなシーンでは6本爪の軽アイゼンなどが利用されるが、つま先やかかとに爪がないため、足裏全体を平らに置いて歩く“フラットフット”で斜面にしっかり爪を食い込ませなければいけない。
その点、この10本爪アイゼンは、つま先からかかとまで爪が配置されているので、フラットフットの歩き方に慣れていない冬山初心者であっても、安心して雪の上を歩くことができる。つまり、エバニューの「10本爪アイゼン」は、6本爪を使用するようなシーンで、より安定感を高めてくれる「軽アイゼン」というわけだ。
前爪を使って登るような傾斜のある山や、森林限界を超えた凍結路での使用は想定していないので、そうした山行では別のアイゼンを選択しよう。
■ラチェット式で着脱が簡単

この「10本爪アイゼン」は柔らかいシューズにも装着が可能な雪山トレッキング用アイゼンだ。コバが付いていないシューズでも装着できるので、手軽に使用できるのがうれしいポイントだ。また、左右のバックルで締める「Vクロスバンド・2バックルシステム」により着脱がとってもスムーズ。


バックルはラチェット式なので、グローブをしたままでもしっかりとアイゼンを装着できるという点も便利。ラチェットを調節しながら、足が痛くならない程度にベルトを締めていく。リリースするときはレバーを持ち上げるとベルトが緩むので、ワンタッチで取り外しや締め具合を調節できる。
■サイズ調節の方法もチェック

アイゼンを使用する際は、あらかじめシューズに合わせてサイズを調節しておくこと。調節方法は、まずフレーム裏のビスを緩めた状態でアイゼンにシューズをのせてバックルを装着。アイゼンのブレードをシューズにフィットするように調整したら、付属の六角レンチでビスを時計回りに締めていく。アイゼンとシューズの間にすき間がない状態になっていればOKだ。
なお、アイゼンには左右があるので、シューズも左と右をそれぞれ合わせて調節しておこう。アイゼンのバーに左と右が表記されている。

■バックルストッパーも付属

ラチェット式のバックルは、アイゼンの装着やリリースが簡単にできることが利点。その反面、雪がバックルの中に入り込んだり、何かに引っ掛けたりすることで緩んでしまったり、誤解放されてしまうことがある。
エバニューでは、そんな不意な緩みを防ぐ「アイゼン用バックルストッパー(EBY018)」を単体でも販売しているが、「10本爪アイゼン」にはそのストッパーが標準装備されている。バックルに装着するとラチェットが固定され、誤解放されるのを防ぐことができるので、新雪や深雪など足首まで埋まる雪道を歩行する場合は必ず使用しておきたい。ストッパーは簡単にバックルに装着・固定ができ、取り外しも簡単だ。

ラチェット式で装着もリリースが簡単なうえ、誤解放を防ぐ安全面まで考えられた「10本爪アイゼン」は、冬山初心者にもぴったりのアイテム。手軽に使えて、フラットフットを意識せず歩け、何より10本爪という安心感は、冬山トレッキングにとって強い味方になるだろう。
●商品情報
エバニュー 10本爪アイゼン(EBY017)
サイズ:S(22~24.5cm)、L(25~28cm)
質量:S/720g、L/760g(ペア)
付属品:収納袋、バックルストッパー、六角レンチ