梅雨前線が列島に停滞し、筆者は仕事も山行も停滞中。梅雨らしい雨に庭のアジサイだけが生き生きと大輪の花を咲かせている。

 7月も半ばに入り、夏山では花々がハイシーズンを迎えようとしている。Web上では登山記録が続々と更新される中「今年もあの高山植物の女王が開花!」というニュースが出てきた。部屋の湿度は相変わらず高いが、あの日の稜線歩きを思い出すと気分が幾分爽やかになる。そんな気持ちのいいコマクサのトレイルを紹介したい。

※山行は全て2023年のものです。

■高山植物の女王コマクサを気軽に観察! 夏の「野反湖(のぞりこ)」は黄色も赤もバッチリ

夏の野反湖は花盛り! 今年はニッコウキスゲが当たり年!?

 コマクサは、環境の厳しい高山の稜線に咲く小さくも可憐な花で“高山植物の女王”と呼ばれるほど人気のある花だ。漢字で書くと駒草。花の形が馬の顔に似ているからその名がついたそうだ。高山の厳しい稜線に咲く姿は、力強く美しい。厳しい季節風が当たる岩稜帯、他の植物が生えることができないような砂礫地を好み、孤高に咲く姿はまさに女王の名に相応しい。

 「でも、高山植物の女王なんだから見に行くのは大変なんでしょ?」と思われがちだが、意外と気軽に出会える場所がある。周囲を高い山々に囲まれた“天空の湖”野反湖だ。

 深いブルーを湛えた湖面が印象的な野反湖の周辺には、弁天山・エビ山の草原にはニッコウキスゲ、対面の八間山のトレイル上にはコマクサの群生地があるのだ。八間山は野反峠の駐車場から20分ほどのところにあるので、ニッコウキスゲと共にぜひとも行ってみてほしい。地元六合村の中学生が、荒れ地に植栽したコマクサは、園芸品種のようで赤みが自然のものよりも強いようだが、野反湖の厳しい自然環境にたくましく適応していた。

 ノゾリブルーを見守るような丘に咲くコマクサは一見の価値あり。八間山から白砂山の稜線のトレイルも素晴らしい眺望が広がっている。ぜひ行ってみてほしい。

在来植物を守るために、他所からの土壌や種子を持ち込まないよう靴底を洗おう

ドライブをしながら、一気に2,000m級の山々へ! 高山植物の宝庫「池の平湿原」

白いコマクサは人気の的。群生地で探してみよう!

 池の平湿原は、長野県東御市「湯ノ丸高原」にある四方を山に囲まれた三方ヶ峰火山の火口原にある高層湿原で、気候は内陸性で気温差が大きく3,000m級の高山植物も見ることができる。冷涼な気候で真夏に体を動かすにはもってこい。酷暑が続くと、キャンプ道具を車に積み込んで来てしまう。夏の駆け込み寺のような高原だ。

 湯ノ丸高原から高峰高原を繋ぐ湯ノ丸高峰林道のちょうど中間にあるのが、池の平湿原駐車場(駐車料金600円)。ここからはコマクサ群生地まで1時間ほどだ。利用可能時間があるので、早朝や夕方遅くは注意したい。

歩きやすい木道は天空の散歩道!

 登山道と木道はとても良く整備され、気持ちよく快適に歩ける。1周ぐるりと回っても3時間ほど。

広大な湿原には、レンゲツツジやスズランなども

 7月はコマクサの他にもアヤメやレンゲツツジが目にも鮮やか。ビジターセンターがあるので、見られる花をチェックしてからスタートしてもいい。ビジターセンターからは、1時間半ほどで池の平湿原へ行くことができる。過去に湯ノ丸キャンプ場から夕方に見晴岳~三方ヶ峰~池の平へとハイクしたときは、夕暮れ迫る稜線に街の明かりと八ヶ岳方面、北アルプスの山並みの陰陽が印象に残っている。湯ノ丸高原は、夏のキャンプ&ハイクにも最適だ。ぜひこの夏のプランに入れてみてはいかがだろうか。