2021年の10月下旬、紅葉を求めて日本百名山の一つ、福島県の名峰「磐梯山(ばんだいさん)」を訪れた。

 磐梯山は標高1,816mの活火山。会津側から見ると山頂が綺麗な三角形をしており、「会津富士」と呼ばれ親しまれている。

 この時は初めて登る山ということで、6つある登山ルートの中で一番高低差がなく、初心者にも人気の「八方台(はっぽうだい)登山口」からのルートを選択。

 しかし、登山を開始して山頂に近づくにつれて、景色が秋から冬へと変化していき、大丈夫かな? と心配になるほどだった。今回はそんな筆者の実体験を写真と共にお伝えする。

■秋に染まる登山口からスタート

八方台登山口から少し歩くと紅葉に染まる登山道を歩ける(撮影:酒井 天里)

 朝8時頃に八方台登山口から登山開始。風景はまさに秋! 紅葉に染まる木々を見てテンションが上がる。しばらくは気持ちのよい散策路といった感じでアップダウンが少なく快適だった。写真を撮りながらゆっくりと進む。

「磐梯温泉 中の湯跡」。白い霧が山を覆っていた(撮影:酒井 天里)

 30分程歩くと、「磐梯温泉 中の湯」跡に出た。90年代まで営業していた温泉旅館の跡地には廃墟が残っている。いまだ温泉が湧いているため、硫黄の匂いが漂っている。ここまで来ると白い霧が山を覆っていた。

■一転して冬の景色に

磐梯山の登山道は一転して冬景色に。積雪と凍結に気を付けて一歩ずつ慎重に歩いた。(撮影:酒井 天里)

 霧の中を進むと登山道には雪が積もり、岩が凍結している箇所が出てきた。左右に生えている木々も白く染まり、秋から一転して冬になってしまった。

 中の湯跡から先の登山道は急な登りが続く。軽アイゼンやチェーンスパイクを携行していなかったので、滑らないように足の置く位置に注意して、一歩ずつ慎重に歩いた。

磐梯山の山頂付近で見た、樹氷と青空の景色(撮影:酒井 天里)
磐梯山の山頂付近では、芸術的な樹氷を見ることができた(撮影:酒井 天里)

 急な登りをなんとか越え、「弘法清水小屋(こうぼうしみずごや)」に到着。展望がないのと、止まると寒いため先を急ぐ。そして、山頂まであと少しというところで、すばらしい景色に出会えた。

 それは、キラキラと輝く樹氷(じゅひょう)と一瞬の晴れ間が見せた青空のコントラスト。樹氷とは、霧や雲に含まれた水分が木や葉に吹き付けられて凍り付いたもの。芸術的な姿に思わず感嘆の声が漏れた。