梨は、甘くておいしい秋の果物として広く知られているが、その甘さの秘密はどこにあるのだろうか?  今回は、滋賀県彦根市にある幻の梨「彦根梨」を栽培する農家、奥田さんにインタビューし、梨はどのようにして甘くなるのか、その真実を明らかにしてきた。

■大きさではない! 梨の色を見て収穫タイミングを見極める

実際の梨の収穫作業を見せていただいた(撮影:ブラボーマウンテン編集部)

 今回取材させていただいた彦根梨は、滋賀県彦根市内の18軒の農家が栽培し、木の上で完熟(樹上完熟)させた状態で出荷するため、甘みが強いのが特徴。彦根梨は連日売り切れで、直売所では整理券を配布するほど。

 人気の理由はやはり甘さにある。ではその甘さが際立つ、一番ベストな収穫のタイミングはいつなのだろうか。

 大きさで収穫されているかと思いきや、収穫時期は深みのある黄や赤みが出てきた頃がベストなタイミングだという。小さくても色によっては収穫することがあるとは、意外だった。

食べごろの梨は軸から取れやすいため、手で掴んで持ち上げるだけで収穫できる(撮影:ブラボーマウンテン編集部)

 奥田さんは生産者として、大きさや内部障害によって規格外になった梨を食べることがあるそうだが、どこで問題があったのかを考え、その際に梨の特性も再確認できることから、決して無駄ではないとおっしゃっていたのが印象的だった。

■先手先手の作業で梨の甘さを引立たせることが大切

農家さんが心をこめて栽培した甘い梨があちこちに(撮影:ブラボーマウンテン編集部)

 次に、梨の甘さを引き出すために行う工夫について伺った。具体的な方法としては、梨の花が咲いて受粉した後、果実が小指ほどの大きさに成長する段階で、通常は1つの場所に7つか8つの果実がつくが、梨の栽培では最も良いものだけを残し、他の果実を摘除する摘果作業を行うそうだ。

 同時に、果実と葉が太陽光を受けやすくなるように、枝を整える摘心(てきしん)作業も行う。こうした先手先手の作業を通し、梨の成長に尽力することで、甘くて美味しい梨ができあがるという。

 また、梨の木を剪定することも大切だ。何年もかけて目標とする樹形・骨格を作り、主枝・亜主枝といった枝の配置を整えることで、木全体のどの部分でもおいしい梨ができるようになるそうだ。

収穫した梨は傷かないよう緩衝材を下に引いておく(撮影:ブラボーマウンテン編集部)

 雨の多さと日照時間の長さも糖度に影響するようで、一般的な梨の糖度は12.5ぐらいだが、2023年の彦根梨は雨と日差しに恵まれ、糖度は13.7で甘みが増している。

 水が足りない時は、スプリンクラーを使って地面を濡らすこともあるそうだが、「葉っぱを濡らすような上からの自然な雨でなければ糖度は高くならないのではないか」と奥田さんはおっしゃっていた。