見た目も引きもいい魚がいっぱい! さらに入退渓のアプローチも楽! それでいて釣り人が少なくて…… そんなわがままを叶えてくれる川があれば嬉しいですよね。実はあります。しかも水清らかな自然渓流の趣も堪能できます。

 群馬県上野村、上野村漁協(漁業協同組合)が管轄する神流川には、通常のキャッチ&リリース区間以外に“毛ばり釣り専用区”が設けられています。気になるその様子を“釣査”してきました。

■清流・神流川の“毛ばり釣り専用区”

雨の日はかなり薄暗い森の中の流れ。ひっそりと落ち着いた雰囲気です

 神流川の上流部は群馬県の南西部を流れ、やがて利根川へと注ぎ込みます。水質的にも見た目にも美しく澄んだ流れが特徴で、関東一の清流と称されています。上野村漁協の管轄するエリアには、釣り人に寄り添った取り組み、釣り場がいくつもあり、一年を通して人気のフィールドが広がっています。冬季ハコスチ釣り場の存在も見逃せませんね。

 筆者は毎年何度か訪れるので、“毛ばり釣り専用区”の存在をもちろん知っていましたし、かねてより気になっていました。けれど、他のエリアでも魚影も濃いうえに魚体のコンディションもよく、程よい難易度で良型が釣れるので、すっかり満足して“毛ばり釣り専用区”ではまだ釣りをしていませんでした。

 今回初めて予約を取ったのですが、当日はあいにくの雨模様でした。梅雨の中休み、すっかり減水していた渓にとっては恵みの雨となるのでしょうか……。

上野村漁業協同組合・毛ばり釣り専用区:https://www.ueno-fc.com/kebari

■雨に濡れそぼる美渓! 美形ヤマメが踊る

一見浅く見える流れでも流心はかなり深いところも

 「本谷(ほんたに)」と「中ノ沢(なかのさわ)」、2箇所ある毛ばり釣り専用区のうち、今回は本谷で釣りをしました。

 受付を済ませて移動、現場で釣りを始める頃にはすっかり本降りになっていました。それでも、白っぽいカゲロウがふわふわと舞っています。フタスジモンカゲロウです。前日は天気予報を見てキャンセルしようかと迷っていたのですが「きっと雨で活性が上がっているに違いない」と、意気込みます。釣り人は楽観的ですね。他の釣り人の姿もありました。

 同行者の先輩フライマンがウェットフライ、沈める釣りをメインにし、筆者が主にドライフライで水面(直下を含む)を狙っていきます。しっぽりと濡れて色気ある渓の景色。雰囲気を出したくて、スローシャッターで静かにシャッターを切りました。

まずは小さめのヤマメが釣れ、雨の釣りがスタートしました

 すると、いつの間にか後でロッドを振っていた先輩がイワナを釣り上げています。急かされるように筆者も釣り始めました。結んでいるだけで濡れてしまうドライフライに悪態をつきながら、ようやく一匹目がフライを咥えてくれました。20cmに満たないヤマメですが、ネットに収まった美しい姿に溜飲を下げます。

ちょうど30cmくらいのヤマメ。魚影が濃いのでチャンスがいっぱいあります

 さて、そこからが絶好調でした。次から次へと30cm前後の良型ヤマメが気前良く水面を割ります。コンディションも文句なし。あまりの調子の良さに「そろそろ飽きたね」などとうそぶきながら、それでも釣り続ける我々二人。普段、たった一本の魚を追って、報われない釣りを強いられているせいでしょうか。渓流に限らず、釣りの嗜好は人それぞれですが、良型が適度な頻度で竿を絞り込んでくれるのは、文句なしに嬉しいです。

 13時までは予約したエリアには他の釣り人が入れないルールなので、安心してマイペースで釣りを楽しむことができます。濡れたジャケットを脱ぎ管理棟でお昼を食べた後、当然のように釣りを再開し、飽きることなく夢中で終了時間まで熱中していました。