花見シーズンはあまりにも短い。毎年行きそびれて悔しい思いをしている人も多いだろう。

 そこで今回は、4月中旬でもまだ間に合ううえに、駅近という絶好のロケーションの花見スポット、「桜の園亦楽山荘(えきらくさんそう)」を紹介する。

 亦楽山荘とは、明治末期に笹部新太郎(ささべしんたろう)が開いた、兵庫県宝塚市の山奥にある桜公園。花見スポットとしても有名な、武田尾廃線ハイキング道の途中から入っていく。

 この笹部新太郎は、水上勉の小説『櫻守(さくらもり)』のモデルになった「桜博士」。

チョウ同年(ちょうどうねん)の野翁亭を彷彿とさせる、亦楽山荘の隔水亭(撮影:野口宣存)
亦楽山荘の隔水亭横にあった五右衛門風呂の風呂釜(撮影:野口宣存)

 なお、亦楽山荘の名前は、中国の詩人、蘇東坡(そとうば)の詩「於潜令(おせんれい)チョウ同年(ちょうどうねん)が野翁亭(やおうてい)」の一節から取ったとされている。ちなみに蘇東坡は、東坡肉(トンポーロウ)の生みの親としても有名だ。(注)チョウは「かたな」に「一」

■なぜまだ花見ができるのか?

亦楽山荘案内図(撮影:野口宣存)
ササベザクラ(撮影:野口宣存)

 花見シーズンが終わっても、亦楽山荘でまだ花見ができる理由は、亦楽山荘の桜は、ソメイヨシノ(染井吉野)ではないから。桜の品種は多数あり、種類が異なれば、開花時期も異なるというわけだ。亦楽山荘で見られる品種は、ヤマザクラ、ササベザクラ、カスミザクラ、エドヒガン、オオシマザクラなどである。

 ソメイヨシノは、江戸末期に染井村(現在の東京都豊島区駒込あたり)の植木屋から吉野桜と名付けて売り出された桜。笹部新太郎はソメイヨシノを桜として認めていなかったため、亦楽山荘にはソメイヨシノが1本も植えられていない。

オオシマザクラ(撮影:野口宣存)
エドヒガン系の園芸種、ヤエベニシダレ(八重紅枝垂れ)(撮影:野口宣存)

 武田尾廃線ハイキング道には、ソメイヨシノも植えられている。そのため亦楽山荘一帯は、3月下旬から4月下旬まで、日本固有種や園芸種のいろいろな桜が楽しめるのだ。

カスミザクラ(撮影:野口宣存)
亦楽山荘城ヶ丘にあるヤマザクラの巨木(撮影:野口宣存)

 具体的には、ササベザクラ(笹部桜)、ヤマザクラ(山桜)、カスミザクラ(霞桜)、エドヒガン(江戸彼岸)、オオシマザクラ(大島桜)、そして園芸種のカンザンザクラ(関山桜)が、木に掛けてあるネームプレートより確認できた。

 ササベザクラは、その名の通り、笹部新太郎が作った交配種である。他の種類の桜もあったのだが、ネームプレートがないため、名前はわからなかった。

 いずれにせよ、開花時期の異なる多くの品種があるため、ソメイヨシノの花見シーズンが終わっても、まだ花見が楽しめるのだ。