アニメ映画『もののけ姫』の舞台といえば鹿児島県の屋久島であることは有名だが、奈良県天川(てんかわ)村に位置する大普賢岳(だいふげんだけ)も木々や岩肌に青々とした苔を生やす、見渡す限り山ばかりの景色が広がる、さながら『もののけ姫』の世界であることをご存知だろうか。

 登山者以外は立ち入ることがほとんどない大普賢岳は、5〜6月にかけてツツジ科の落葉樹「シロヤシオ」という白い花が見頃を迎える。

 もやが立ち込めた神秘的な風景に、真っ白なシロヤシオが咲き乱れる様は圧巻だ。

 そんな大普賢岳へ、2年前の6月上旬に訪れた際の様子を紹介したいと思う。

登山口付近は整備された敷地が広がる。下山後に撮影(撮影:彩)

■唯一の登山口、和佐又口から出発

 大普賢岳に直接アクセスできる登山口は和佐又口(わさまたぐち)のみで、大普賢岳までのピストンコースや、大普賢岳を越えて国見岳(くにみだけ)、七曜岳(ひちようだけ)などを経由する周回コースがある。

 ピストンコースだと5時間ほどの行程だが、周回コースになると8時間ほどかかり、鎖場や梯子が連続し、足場の悪い急斜面を下らないといけないことから、コースの難易度はぐっと上がる。

 和佐又口を進んだ先にある和佐又ヒュッテは2019年に閉館。敷地内のキャンプ場と駐車場は利用不可だ。和佐又ヒュッテから少し下った場所に駐車場があるので、そちらを利用しよう。

和佐又のコル近く。ワニか、恐竜か? (撮影:彩)

 広いキャンプ場を抜け、和佐又のコルを大普賢岳方面に進む。斜度のゆるい自然林が続くが、途中でなんとも怖い(かわいい?)ワニのように見える倒木がある。このコースでは「名物ワニ」となっており、登山者の目を楽しませている。