焚き火を成立させるために必要な要素は、可燃物(薪)、酸素、熱の3つである。どれかひとつが欠けるだけでも、焚き火はうまく燃えてくれない。とくに火起こしの段階には、この3つがバランス良く揃わないと一向に安定した炎になってくれない。

 火起こしのタイミングで、火吹き棒を使って一生懸命空気を送り込んでいるキャンパーを見かけるが、これはかえって燃焼を妨げてしまっている場合もある。火が起きる理屈と空気を送り込むべきタイミングを考えてみよう。

■火起こしに大切なのは「熱を逃がさないこと」

団扇でパタパタしても効率がダウンする

 火起こしで一番大切なことは、“熱を逃さずに溜める”ことだ。火起こし時は早く燃え広げようと、つい空気を送り込んでしまいがちだが、じつはこれは逆効果。瞬間的には炎が大きくなることもあるが、せっかく燃え始めた熱が逃げてしまうのだ。思い浮かべてほしいのだが、熱い食べ物を食べるときは息を吹きかけて冷ますはず。これを焚き火に置き換えると、あおいだり、空気を吹き込む行為は焚き火の熱を下げてしまっていることがよくわかるだろう。

 着火したら、まずは細い薪が燃えた熱を徐々に太い薪へと伝えていくことがポイント。細い薪が燃えて小さな熾火ができると高温を保てるので、その熱を逃さずに太い薪へと燃え移していく。立体的に薪を組んでさえいれば、すでに太い薪が着火するための酸素は十分確保できるので、新たに送り込む必要はない。

 ただ焚き火台によっては空気の流れが悪いものもある。とくに火床がV字型のタイプは、燃焼に必要な空気が不足しがちなので、スムーズな着火には火吹き棒が必要になってくる。