■旧国鉄福知山線廃線敷の見どころ
廃線敷に入ってまず目にするのは、真っ直ぐなハイキング道と武庫川渓谷。廃線敷は崖沿いにあるため、高いところから見下ろす渓谷は絶景だ。
歩いていくと次々とトンネルが現れる。明かりが全くない真っ暗闇のトンネルの中を進むのは、非日常的でスリリングな体験ができる。トンネル内はひんやりとし、夏場は気持ちいい。あちこちから地下水が染み出しているため、水たまりにも注意が必要だ。
運がよければ、トンネル内で寝ているコウモリに出会うこともある。コウモリは近くで見ると意外とかわいい。ただし写真を撮ろうとすると逃げてしまうため、撮影は困難である。
トンネルをいくつかくぐり続けると、赤い鉄橋が現れる。ここは廃線敷が開放されて間もない頃は、下が丸見えの老朽化した細い通路しかなかったため、廃線敷最大の危険スポットだった。しかし現在は整備され、安全に通過できるようになっている。それでも足元から渓谷が真下に見え、スリル満点だ。
そこからさらに進むと、亦楽山荘(えきらくさんそう)の入口にたどり着く。亦楽山荘は山桜で有名な自然公園。コース内には渓谷に流れ込む支流の滝もあり、亦楽山荘目当てに訪れる人も少なくない。体力に余裕があれば登ってみてほしい。廃線敷とはまた違った雰囲気が楽しめるはずだ。
亦楽山荘を過ぎると終点の武田尾温泉郷はすぐそこだ。
廃線敷ハイキングの注意事項としては、
・廃線敷には終点の武田尾にしかトイレがない。出発前にトイレは済ませておこう。
・トンネル内は暗いだけでなく枕木とバラスト(枕木の下の石)で足場も悪い。運動靴もしくは登山靴を履いて、両手が空くヘッドライトを使うのをおすすめする。
・虫対策。暖かくなると、木から虫が落ちてきたり垂れ下がってきたりする。またアブもいるので長袖長ズボン着用の上、服の中に虫が入らないよう、首にタオルを巻くことをおすすめする。
■秘境武田尾温泉郷
武田尾温泉は豊臣方の落武者、武田尾直蔵が薪拾いの際に発見したと伝えられる。お湯はちょっと硫黄臭もするラジウム温泉だ。
温泉は谷間に位置し、いかにも落武者が隠れていそうな雰囲気が漂う。廃線敷を出て、川沿いの道路をしばらく歩くと崖の上にあるJR武田尾駅がある。さらに進み廃線のトンネルを抜けると武田尾温泉に到着だ。温泉は武庫川渓谷を挟んで2軒。
一つは「武田尾温泉 元湯」。いかにも秘湯といった感じの趣がある古くからある温泉だ。もう一つは「紅葉舘 別庭 あざれ」。新しい温泉施設で旅館も併設しており宿泊も可能だ。どちらも甲乙つけがたいが、武田尾を訪れた際には、温泉に浸かって帰ることをおすすめする。
また、「紅葉舘 別庭 あざれ」の下にはかけ流しの足湯が開放されており、訪れるハイキング客も多い。すぐ近くにJR宝塚線の武田尾駅があるので帰りも安心だ。
■旧国鉄福知山線廃線敷までの行き方
阪急宝塚駅前から阪急バスに乗り、10分程度で廃線敷最寄りのバス停に到着。阪急バスは3番ホームから有馬線44系統山口営業所前行に乗り、木ノ元バス停で下車。
バス停から廃線敷までは200m程度と近いが、道標がなく入口がわかりにくい。事前に、にしのみや観光協会のWEBサイトから「廃線敷マップ」をダウンロードしておくとよいだろう。なお、廃線敷ではほとんどの場所で携帯の電波は届かないので要注意。
今は新緑が美しい季節。密を避け、大自然の中で廃線ハイクを楽しもう。
●武田尾温泉 元湯
・URL:http://www.motoyu.com/
・入湯料:1000円
・住所:兵庫県西宮市塩瀬町名塩4205−1
・電話:080-4884-1876
・営業時間:11:00~17:00
●紅葉舘 別庭 あざれ
・URL:https://www.takedao-onsen.jp/
・入湯料:1800円
・住所:兵庫県宝塚市玉瀬字イヅリハ 1-47
・電話:0797-91-0131
・営業時間:11:00~15:00