■気温は20℃近くまで上昇! 季節外れの暑さに苦戦
スタート地点は、名木山ゲレンデのリフト乗り場横。この日は朝から南風が吹き、季節外れの暖かさとなった。動く前から汗ばむほどで、スタート前のブリーフィングでは、熱中症への警戒や、レース中のこまめな水分補給が呼びかけられた。
午前9時、ゲレンデボトムから一斉に選手が飛び出した。いよいよ制限時間2時間、標高1,082mの登りが始まる。筆者は集団後尾からマイペースで登っていったが、暑さのため、序盤から尋常でない汗が噴き出した。急斜面では若干、気持ち悪くなったほどで、常に水分補給が欠かせなかった。
なお白馬の「アメダス(白馬村役場に設置)」では、午前9時の気温が約15℃、10時で約17℃、ゴール制限時間の11時で約20℃だった。もちろん標高が上がると気温は低くなる。筆者も「ここは我慢」と思いながら、ひたすら標高を上げるべく足を運んだ。
■眼前に広がる白馬三山! 北アルプスの絶景が待つゴール地点
ゲレンデ上部になるにつれ、涼しくなってきた。「うさぎ平」の周辺になると、一般のスキーヤーも増えてきて、「頑張って!」と選手に熱い声援を送ってくれる。
標高は高いものの、雪は完全に緩んでザクザクと沈む。とくに旗門が設置され、キックターンなどの方向転換が必要な急斜面は苦労した。先行の選手が通った跡は、踏み固められてシールが効きづらい。でも先行者の跡を外すと、足場が崩れ、ズルリと滑る。足の筋肉の疲労が限界に達していた筆者は、ここで追い打ちをかけられ、何度か足が攣りそうになった。「ここを登り切ったらラストですよ!」そんなスタッフやスキーヤーの応援を受けて、この難所を乗り切った選手は多いだろう。
八方池山荘横のゴールは、目の前に白馬三山が広がり、息を呑むほどの絶景だ。このスケール感は白馬ならでは。雄大な山岳景観と、そこを舞台にしたハードさこそが、大会の最大の魅力だろう。筆者も、先に到着した選手たちの声援に迎えられて、感動のゴールを切ることができた。
■オリンピアンがプレゼンターの表彰式
例年、八方バーティカルは「白馬八方尾根スプリングフェスティバル」と同日に開催される。今年も白馬村出身の渡部暁斗さん、渡部善斗さん、上村愛子さんをゲストに迎え、トークショーや抽選会が行なわれた。そして、八方バーティカルの表彰式は、ゲストがプレゼンター。なんとオリンピアンから表彰してもらえるのだ。
今年のバーティカルの優勝者は、シニア男子は加藤淳一選手、シニア女子は上田絢加選手。両名とも、1週間前に行われたホタカのレースでも優勝しているSKIMOの実力者だ。タイムは、加藤選手は51分53秒、上田選手は1時間4分40秒。そして、注目のバイアスロンのオリンピック選手・田中友理恵選手はシニア女子2位だった。
SKIMOのバーティカル種目では、トップ選手らは、文字通り心肺機能の限界に挑みながら登り続ける。ゴールを切った瞬間にその場に倒れ込む選手も多い。トップ選手も、最後尾の選手も、一人ひとりが自分の限界に挑みながらゴールを目指すのがバーティカルレースなのだ。もちろん順位は付くが、バーティカルは「自分との闘い」の要素が強い。そういう意味でも、このレースに参加したすべての選手を称えたい。
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