魚釣りの仲間と会ったとき、常に話題にのぼるのが「いま、日本でいちばんいい獲物が多いのはどこか」というもの。それぞれに贔屓のポイントがあるが、大きなエリアとしては、「島根県から熊本県にかけての日本海〜東シナ海」で意見が一致する。
黒潮の洗う離島や四国、紀伊半島、伊豆半島も魚は多いが、魚の全体に占める「本命」の数が少ない。その点で日本海〜東シナ海にかけては、釣れる魚がどれもおいしい。釣れたら最高の夕食が約束されるのが、この一帯の海の特徴だ。
島根から熊本にかけての海岸線を旅していて、岬や防波堤に地元の車が集まっていれば、獲物を確保できたようなもの。アジやカマスといったおかず魚や、ときには回遊魚も釣れ上がる。隣の釣り人と肩を触れ合う距離感で釣りをする関東住まいからすると、夢のような環境だ。
■知る人ぞ知る、海遊びのためのキャンプ場
こんな「お魚特濃海域」を旅しているときにみつけたのが、山口県阿武町の「遠岳(とおだけ)キャンプ場」だった。炊事棟とトイレ、水シャワーだけを備えた簡素なキャンプ場だが、ここはロケーションが素晴らしい。
サイトは海まで徒歩0分。斜面に段を切ってサイトが作られているから、プライベート感も高い。そして、目の前には日本海なのに南国のような色をした海が広がっている。
マスクと足ひれをつけてキャンプ場の目の前に泳ぎ出すと、浅場から魚が多い。岩陰からこちらを盗み見るのはカサゴ。岩の周りはイシダイが群舞している。深場にいけば、もっといい魚がいるだろう。
それもそのはず、遠岳キャンプ場が位置するのは数km続く断崖絶壁の東端だ。ここから西側の海岸線は船でしかアプローチできないから、まるで場荒れしていないのだ。