この冬は雪に恵まれ、雪山を楽しむにはもってこいのシーズンである。だが、全国的に遭難事故も起こっており、手放しに楽しめるわけではない。登山以外でも、先日私は富山県で災害級の大雪に見舞われ、日本海側の地域では暮らしとともにある雪について考えさせられた。

 2022年1月(山梨県警発表)の山岳遭難発生状況を振り返り、山梨県在住の登山ガイドである渡辺佐智が県警地域課へのインタビューを行った。遭難事故データをもとに1月の傾向を解説していく。

■2022年1月の山梨県の遭難

山系別遭難発生状況、富士山0件、御坂山系1件(霜山)、南アルプス山系2件(農鳥岳、荒川出会)、八ヶ岳0件、秩父山系3件(甲武信ヶ岳、棚山、湯村山)、大菩薩・道志0件『山梨県警発表、2022年1月1日~1月31日』

 山梨県の1月の遭難件数は6件であった。コロナ禍以前では、例年1月は年間で一番遭難が少ない月にあたり、2桁から1桁台の件数に減少する。装備が大きく変わり、気温は低下し、日中の行動時間も短いため入山者が減るためと考えられる。

 冬季の遭難は、経験者による計画性のある登山の末の遭難と、経験の浅い登山者による計画性のない登山からつながる遭難。この二極化が顕著になる傾向が見られる。もちろん、経験者による計画性のない登山や、経験が浅くても計画性のある登山もある。自分の体力や技術、知識を客観的に判断しながら計画するのは難しいが、計画と準備こそ冬季は命に直結してくる。

■低体温症に注意

態様別発生状況、道迷い0件、滑落1件、転落0件、転倒1件、疲労0件、発病2件、その他2件(悪天候、装備不備)『山梨県警発表、2022年1月1日~1月31日』

 遭難事故の件数として毎月多かった道迷いが0件になり、転倒(凍結した岩)1件、発病(低体温症)2件等、冬季特有の原因が目立つ。滑落1件(アイスクライミング中に滑落後、救助されるまでの間に低体温症ののち亡くなっている)。

 登山者の最低限の装備として停滞中もしっかり保温できる準備が必要だ。事故の発生が午後であれば、救助は翌日以降になる可能性は高くなる。最低限一晩ビバークできる準備はできているだろうか。