北アルプス北部、白馬乗鞍岳周辺での雷鳥調査に参加してきた。氷河時代の生き残りとして、天然記念物にも指定されている (ニホン)ライチョウは、高山帯の過酷な環境でひっそりと、けれどたくましく生きている。彼らの生息数は、気候変動や環境などの変化とも密接に関係する。減少傾向にあるのか、それとも一定数を保っているのか、その判断材料となる調査が、毎年地元小谷村の山案内人のメンバーを中心に行われている。(調査日:2021年6月24日)

■登山道沿いが一番アツい!

見張り中のライチョウ(オス)

 

 調査場所となっているのは、栂池高原から白馬乗鞍岳から白馬大池を経て小蓮華山へと連なる稜線上だ。登山道を中心に、深いハイマツの森や岩場、雪渓など道なき山の中を手分けして捜索していく。個体を発見、観察することももちろんだが、調査の大半は痕跡を見つけることだ。「見張り糞」「抱卵糞」といった糞を探してGPSに落とし込む。また他の鳥類でも見られるが、ライチョウは「砂浴び」をする。これは人間で言うところのシャワーの役割を果たしている。砂浴び跡を見つけるのも彼らのテリトリーを知る上で重要だ。

 ライチョウの個体を見るなら、ズバリ!"登山道沿い"だ。彼らはこの時期、登山道脇に多く見られる浅いハイマツ帯で、ガンコウランやアオノツガザクラなど高山植物を食べている。また登山道自体が恰好の「砂浴び」の適地となる。さらにオコジョやキツネ、猛禽類などライチョウを狙う外敵たちが嫌う「人間」が通るというのも、理由のひとつになっているようだ。不思議なことに人をあまり恐れないのがライチョウだ。わざわざ僕たちの方へ飛んできて、のんびりとエサをついばんでいる様子は微笑ましい。

■その名も雷鳥坂!  上部はライチョウたちの楽園だった

小蓮華山稜線上の雪渓を歩くライチョウ

 冬は真っ白な冬毛に覆われている彼らだが、この時期になるともうすっかりと夏毛に切り替わっている。白馬乗鞍岳山頂部では登山道で砂浴びしていたり、脇でエサをついばんでいる個体を数羽見ることができた。「雷鳥坂」では今回は意外と個体数が少なかった。一番個体を発見できたのは「船越ノ頭」〜小蓮華山稜線にかけてで、目立つ岩の上で見張りをしていたり、わずかに残った雪渓上を歩いている個体を見かけた。蛙のような鳴き声でオス同士が牽制し合っていたり、今回唯一のペアもこの稜線上で見ることができた。

 今回発見できた個体は、カップルのメス以外は全てオスだった。これは抱卵中や産卵に向けて食事に夢中になっているメスのため、オスが見通しのいい場所で見張りをしているからだろう。もうすぐ、かわいいヒナたちを連れたメスの姿も見られるようになるだろう。言うことを聞かないヒナたちの育児に奮闘するメスの姿。家族のため、ときにわざと囮になって外敵を引きつけてるオスの勇敢な行動。そんな光景を出会うとつい口元が緩んでしまう。

 まだ梅雨の最中ではあるが、山の上は天気のいい日も案外とある。高山植物の美しい花々も咲き出している。ぜひ山登りを楽しみつつ、彼らに会いに出かけてみてはいかがだろう。くれぐれもライチョウ家族を驚かさないよう、そっと見守るようにしたい。