秋になるとよく目につくようになる虫のひとつが「赤とんぼ」だ。水辺だけでなく、公園や畑、草地などでもよく見られる、季節感のある虫たちである。

 ところが、”赤い姿をしているけど赤とんぼではないもの”もいることはご存知だろうか?  今回は、そのような少しだけ紛らわしい赤とんぼについて、紹介していこう。

■赤いのに赤とんぼでないものがいる?

 じつは、「赤い姿のトンボ」には、さまざまな種類がいる。

 もっとも代表的な赤い姿のトンボと言えば、「アキアカネ」だろう。アキアカネは初夏に平地で羽化し、夏の暑い時期は山に移動し、秋になると平地に戻ってきて交尾産卵する習性を持つ。そのため、秋になると身近な場所でよく見かけるようになるトンボだ。

アキアカネ

 また、身近に見られる赤い姿のトンボに「ショウジョウトンボ」という種がいる。ショウジョウトンボは雌雄で姿が異なるが、オスは顔まで真っ赤になるトンボだ。季節による移動をしないので、夏の暑い時期も平地で見ることができる。

ショウジョウトンボのオス

 アキアカネとショウジョウトンボは、ともに赤い姿を持つトンボだ。しかし、アキアカネは赤とんぼに含まれるが、ショウジョウトンボは含まれない。

 なぜこのようなことが起きるのだろうか?  その理由には、「赤とんぼ」という言葉の定義が関係している。

■赤とんぼの定義と紛らわしい理由

 ほとんどの方は、 「赤とんぼ」という言葉を「赤い姿をしているトンボ」のことを指して使っているだろう。ところが、この言葉の正確な定義は「トンボ科アカネ属に属するトンボたちの総称」である。このズレにより、少々紛らわしい事態が発生している。

 アキアカネは「アカネ属」に属するので、正真正銘の赤とんぼ。一方、ショウジョウトンボは「ショウジョウトンボ属」に属する。そのため、ショウジョウトンボは多くの赤とんぼよりも赤い姿をしているのにも関わらず、赤とんぼではないのだ。

 赤とんぼの紛らわしい面は、さらにある。なんと、”青い姿の赤とんぼ”まで存在する。これは、青い姿を持つ「ナニワトンボ」がアカネ属に属するためだ。

ナニワトンボ

 このように、赤とんぼという言葉は、字面と実態が合わないケースが少なくない。

 ただ、日常会話で話をするときには、「赤いとんぼ=赤とんぼ」でまったく問題ないだろう。日常会話で厳密な意味を守らなくてはならない場面はほぼないからだ。むしろ、常に厳密な意味にこだわろうとすると、スムーズなコミュニケーションができなくなるため、相手の知識に合わせて柔軟に解釈して使うのがいい。