◼️巨大な火口の間を歩ける珍しいルート

海外からの登山者も多いため、文字標識には英語とハングル

 このルートのハイライトは、ここから巨大な火口の間を登っていく間の不思議な景色にある。特に、10月のこの時期は、黒々とした火山の斜面に黄色く色づいた草紅葉が映え、夏とは違った富士山の表情を見せてくれる。

山頂へ続く道は崩れやすい。一歩一歩、慎重に進もう

 ここから、宝永山を目指して標高を上げていくのだが、足元には細かな火山礫、いわゆる「ザレ場」が続く。踏み出した足がズルッと滑り、「一歩歩いては半歩下がる」。これぞ富士山、と感じるような足元だ。一歩一歩、砂礫を踏みしめながら登っていく。

草紅葉とガスが作り出す幻想的な光景

 宝永山山頂までは、登りのコースタイムで2時間ほど。ルートや歩くペースによって異なるが、十分な時間を見ておきたい。特に火口から山頂へ向かう区間は、細かな砂礫の急斜面が続くため、見た目以上に体力を使う。

 山頂に立つと、天気が良ければ眼下に山中湖など周囲の景色が広がる。独立峰である富士山ならではの、遮るものの少ない大パノラマだ。

◼️️10月でも「富士山らしい」登山ができる山

運が良ければ、山中湖方面がドーンと見下ろせる

 標高は富士山頂より1,000m以上低い。それでも、火山地形、ザレ場、急斜面、そして山頂からの大展望と、富士山らしい登山を十分に味わうことができるのが宝永山の魅力だ。

 ただし、標高が富士山より低いからといって、観光気分で歩ける場所ではない。登山靴などのしっかりした装備を用意したい。細かな石が靴の中に入りやすいため、ハイカットの靴が安心だ。また、落石の危険もあるので、ヘルメットの携行もおすすめする。

樹林帯を歩くのは初めの30分だけ

 また、10月は日差しがあると暑く感じる一方、風が吹けば一気に寒くなる。防寒着を用意し、天候の急変にも備えておきたい。出発前には、必ず最新の登山道・道路情報も確認しよう。

 なお、五合目の登山口から3分ほど上がったところにある公衆トイレは、2026年は10月13日までで閉鎖される予定。その後は、仮設トイレが富士山スカイラインの冬期閉鎖まで設置される予定となっている。

 富士宮口五合目は、朝日や夕日、雲海などを目当てに訪れる人も多い。登山だけでなく、富士山の秋を気軽に感じられる場所でもある。

◼️富士山の山頂には登れないけれど……

右側に描かれた小さなピークが宝永山

 9月10日で、富士山の登山シーズンは幕を閉じた。

 しかし、それは「富士山にもう登れない」という意味ではない。山頂を目指すことはできなくても、10月なら宝永山という選択肢があるし、じつは五合目周辺で散策を楽しんでいる登山者の姿も少なくない。

 夏の喧騒が落ち着いた秋の富士山で、迫力ある火口と黄色く染まる草紅葉を楽しむ。いつもの富士登山とはひと味違う、秋ならではの富士山歩きを楽しんでみてはいかがだろうか。