◼️冬 ── ぬくもりを知る季節
12月。他の川では水温が5℃程度まで低くなり、とても入っていられない季節だが、円原川は脅威の「11℃」をキープし続けた。
水温の方が外気温よりはるかに高い。これは本当にすごいことであり、広大で豊富な伏流水がなせる奇跡だ。地中を流れる水は年中11℃近辺をキープしているため、夏は冷たく、冬は温かい川となる。数字だけ見れば冷たいはずなのに、不思議と入れてしまうのだ。
そして、外気温が低いことで、サウナ室の蒸気が他の季節に比べて断然心地いい。湿度がやわらかく感じ、温かさに包まれている感覚だ。サウナ室から出た瞬間の外気もキリッと気持ちいい。深呼吸すると、肺の奥まで澄んでいく。
蒸気のぬくもり。水から上がったときの深部体温のポカポカ感。焚き火を囲んだときの人のぬくもり。冬は寒いからこそ、もっとも“ぬくもり”を感じられる季節。冬を一度体験したらわかる。冬にサウナに来ないなんて、正直もったいないと。
◼️冬季限定プランという深化
冬は雪や寒さの影響もあり、予約は一気に減る。
気軽に「ちょっと行ってみよう」とはならないからこそ、冬は“短時間で整えて帰る場所”ではなく、“滞在して団欒する場所”に設計し直した。冬季限定プランは、1日1組限定・5時間制とし、サウナだけでなく、焚き火を囲んだ「食」もリトリートの一部にした。
食体験のメインは、岐阜の食材にこだわった鴨鍋。地元で仕入れたバルバリー種の鴨肉と、岐阜の発酵文化を活かした割下に、円原の川里のハーブで香りを重ねる。食材は旬の地のものを用意するが、仕上げるのはお客さん自身。自然の中で火を扱い、湯気を立て、自分たちのペースで完成させる。
サウナで緩み、川で締まり、焚き火でほどけ、鍋と団欒で温まる。身体の内側と外側、両方から温まる設計だ。
派手さはない。でも、深い。体験者の満足度も上々だった。
準備する側はとても大変で、売り上げも効率も悪かったが、求めてるのはそこじゃない。団欒の笑顔や笑い声を聞いてるだけで、僕自身の心も温まっていった。
冬は、知る人ぞ知る、リトリート向きの、とてもあたたかい季節なのだ。
◼️そして、巡って春、本オープンへ
荒野を整備して1年。そしてさらに1年、プレオープンで四季を一周するなかで、夏は雨と増水、冬は雪と寒さと、自然の恩恵だけでなく脅威も体験した。
そしていよいよ、このサウナ村「THE WATERS」も、本オープンの時が近づいてきた。
オープンの日は、3月14日に定めた。円周率3.14。円。循環。円原川。1年を1周し、また春に戻る。啓蟄の頃、土の中の命が動き出す季節。
まだ構想のすべては完成していない。むしろ、ここからが本番だ。でも、この1年で確信した。今までやってきたこと、信じてきたことは間違っていなかった。絶望的な挫折も味わったが、今、それらの辛かったことのすべてが、大切な過程となった。
提供すべきものはサウナ体験ではなく、この特別な場所で過ごす豊かな時間であり、本質的なリトリート体験だ。
3月14日。いよいよ、本番が始まる。