冬 ── ぬくもりを知る季節

 12月。他の川では水温が5℃程度まで低くなり、とても入っていられない季節だが、円原川は脅威の「11℃」をキープし続けた。

 水温の方が外気温よりはるかに高い。これは本当にすごいことであり、広大で豊富な伏流水がなせる奇跡だ。地中を流れる水は年中11℃近辺をキープしているため、夏は冷たく、冬は温かい川となる。数字だけ見れば冷たいはずなのに、不思議と入れてしまうのだ。


足を入れた瞬間は締まるが、すぐに頭と身体が受け入れる。本当に不思議な水だ

 そして、外気温が低いことで、サウナ室の蒸気が他の季節に比べて断然心地いい。湿度がやわらかく感じ、温かさに包まれている感覚だ。サウナ室から出た瞬間の外気もキリッと気持ちいい。深呼吸すると、肺の奥まで澄んでいく。

 蒸気のぬくもり。水から上がったときの深部体温のポカポカ感。焚き火を囲んだときの人のぬくもり。冬は寒いからこそ、もっとも“ぬくもり”を感じられる季節。冬を一度体験したらわかる。冬にサウナに来ないなんて、正直もったいないと。

冬季限定プランという深化

 冬は雪や寒さの影響もあり、予約は一気に減る。

 気軽に「ちょっと行ってみよう」とはならないからこそ、冬は“短時間で整えて帰る場所”ではなく、“滞在して団欒する場所”に設計し直した。冬季限定プランは、1日1組限定・5時間制とし、サウナだけでなく、焚き火を囲んだ「食」もリトリートの一部にした。

一幅の絵画のような冬景色。凛とした静けさの中で最も自然と向き合える季節だ

 食体験のメインは、岐阜の食材にこだわった鴨鍋。地元で仕入れたバルバリー種の鴨肉と、岐阜の発酵文化を活かした割下に、円原の川里のハーブで香りを重ねる。食材は旬の地のものを用意するが、仕上げるのはお客さん自身。自然の中で火を扱い、湯気を立て、自分たちのペースで完成させる。

 サウナで緩み、川で締まり、焚き火でほどけ、鍋と団欒で温まる。身体の内側と外側、両方から温まる設計だ。


岐阜の粋を極めた特別な鍋。これらを繋ぐ水は、もちろん円原川の伏流水だ

鴨の脂が割下と混ざり合い、コクと旨みが凝縮した冬のご馳走。心身ともに温まる

 派手さはない。でも、深い。体験者の満足度も上々だった。

 準備する側はとても大変で、売り上げも効率も悪かったが、求めてるのはそこじゃない。団欒の笑顔や笑い声を聞いてるだけで、僕自身の心も温まっていった。

 冬は、知る人ぞ知る、リトリート向きの、とてもあたたかい季節なのだ。

そして、巡って春、本オープンへ

 荒野を整備して1年。そしてさらに1年、プレオープンで四季を一周するなかで、夏は雨と増水、冬は雪と寒さと、自然の恩恵だけでなく脅威も体験した。


去年の大雪よりマシだったが、なんせ雪を乗り越えるのは大変な作業ばかりだ

待望のちゃんとした更衣室とトイレも完成。迎え入れる体制は整った

 そしていよいよ、このサウナ村「THE WATERS」も、本オープンの時が近づいてきた。

 オープンの日は、3月14日に定めた。円周率3.14。円。循環。円原川。1年を1周し、また春に戻る。啓蟄の頃、土の中の命が動き出す季節。

 まだ構想のすべては完成していない。むしろ、ここからが本番だ。でも、この1年で確信した。今までやってきたこと、信じてきたことは間違っていなかった。絶望的な挫折も味わったが、今、それらの辛かったことのすべてが、大切な過程となった。

 提供すべきものはサウナ体験ではなく、この特別な場所で過ごす豊かな時間であり、本質的なリトリート体験だ。

 3月14日。いよいよ、本番が始まる。