■八ヶ岳のいいとこ取り!  苔生す樹林帯と、険しい岩稜帯を楽しむ天狗岳周回コース登山レポ

苔生す静かな登山道を歩いていると、ニホンカモシカとの思わぬ出会いがあった

●唐沢鉱泉から展望台を経て西天狗岳・東天狗岳山頂へ

 唐沢鉱泉を出発し、しゃくなげ橋を渡ると「西尾根登山口」だ。北八ヶ岳らしい苔むした樹林帯の登山道へ入っていく。朝日を浴びて輝く苔も美しいのだが、もうひとつ、この登山道を彩ってくれるものが「コイワカガミ」の花だ。イワカガミよりも小ぶりで、やや横向きに咲く特徴がある。

 樹林帯の中、ときおり現れる花に足を止めながら1時間45分ほど進むと、見晴らしのよい第一展望台に着く。ここからは、赤岳をはじめとする南八ヶ岳の山々や、南アルプスを一望できる。

 さらに35分ほど進み、第二展望台を越えたあたりから、ごつごつとした岩が多く見られるようになってくる。あと30分ほどで西天狗岳山頂に辿り着くが、山頂に近づくにつれ手足を使ってよじ登るほどの大きな岩が積み重なる一帯が待ち受けている。急峻な岩山ではないので、ひとつずつ落ち着いて岩にペイントされた矢印に沿ってクリアしていこう。広々とした山頂では、雄大な景色が見られるはずだ。

朝日を受けて輝くコイワカガミ。登山道のあちこちで見ることができる

●東天狗岳から黒百合ヒュッテまで、岩の道を進む

東天狗岳山頂より、黒百合ヒュッテへと続く岩の道を望む

 西天狗と東天狗を繋ぐ稜線は両側が切れ落ちているが、道幅は十分ですれちがいも問題ない。右手には赤岳や硫黄岳といった南八ヶ岳を代表する山々が見られる。特に硫黄岳の、はるか昔の噴火の影響とされる断崖絶壁は必見だ。

 東天狗岳山頂は、岩肌むきだしのうえ狭いので、景色を楽しんだ後は、後続の登山者に場所を空けよう。
この先は、次の休憩スポットである黒百合(くろゆり)ヒュッテまで、山頂と同じく岩肌の道を進むことになる。行く手を阻む大岩を、手足を使ってひとつずつ越えていこう。ストックなどはバックパックに収納し、両手を自由にしたほうが安定して進める。

 また、同じような岩ばかりで進行方向を見失う恐れもある。その時は落ち着いて周囲の岩を観察しよう。正しい進行方向には、岩に白いマルが描かれている。

●黒百合ヒュッテで休憩し、苔の道で唐沢鉱泉へ戻る

展望台の絶景に思わず足が止まる筆者

 黒百合ヒュッテの真っ黒な建物が見えてきたら、長かった岩の道も終盤だ。黒百合ヒュッテでは小屋泊、テント泊も受け入れているうえ、名物ビーフシチューをはじめ食事メニューも豊富だ。時間が許すなら、こちらで一息入れていこう。ちなみに、小屋の名前にもある「黒百合」は5月から6月にかけて見頃を迎えるが、近年は花の数が減ってしまったと、小屋の方が寂しそうに話してくれた。

 ヒュッテで休憩したら、いよいよ唐沢鉱泉に向けて最後の下りだ。ここからは岩の道から一転、再び苔生す樹林帯へと入っていく。シラビソなどの樹木の下、苔に覆われた岩が幻想的だ。清流の音を聴きながら、マイナスイオンを浴びて歩こう。

 沢沿いの樹林帯を歩いていると、茂みの中を動く影が。驚き目をやると、鹿とも猪とも違う動物が、こちらの様子を伺うように立っていた。ニホンカモシカだ。人に慣れているのか、逃げることなく、野草を食べ始めるではないか。思わぬ出会いに感謝し、食事の邪魔をしないようそっと先へ進んだ。

 黒百合ヒュッテを出てから約1時間45分、ようやくスタート地点の唐沢鉱泉へと帰り着く。今日1日の天狗岳の軌跡を振り返りつつ、安全運転で帰路につこう。

●唐沢鉱泉から天狗岳登頂!  周回コース所要時間

唐沢鉱泉(からさわこうせん)駐車場(0:00)→第一展望台(1:45)→第二展望台(2:10)→西天狗岳(2:45)→東天狗岳(3:05)→黒百合ヒュッテ(4:25)→唐沢鉱泉駐車場(6:00)

●【MAP】天狗岳登山口(唐沢鉱泉  八ヶ岳秘湯の宿)

●【MAP】天狗岳

●施設名 唐沢鉱泉 八ヶ岳秘湯の宿

住所 〒391-0213 長野県茅野市豊平4733−1
電話 0266-76-2525

ホームページURL http://www.karasawakousen.com/index.html

※営業日時はホームページよりご確認ください

●施設名 黒百合ヒュッテ

住所 〒391-0013 長野県茅野市宮川8065−1
電話 0266−72−3613

・ホームページURL https://www.kuroyurihyutte.com/

※営業日時はホームページよりご確認ください

※この記事の情報は2024年8月現在のものです。内容が変更される場合もありますので、最新の情報はリンク先のHPでご確認ください。