青森県の南東の端っこにある八戸市は、知られざる食のパラダイスだ。八戸漁港にはスルメイカ、サバ、イワシなど様々な魚介が水揚げされており、なかでもスルメイカは朝と夕方の2回水揚げがあるほど大人気。近年は不漁が続いているけれど、それでも旬の時期には夕方に水揚げされたスルメイカが、その日の夜に居酒屋で出てきちゃうからすごい。南部せんべいを使った「せんべい汁」や、隣の五戸町で育った黒毛和牛「あおもり倉石牛」など、陸海の美味がいくらでもある。

 その八戸市の郷土料理「いちご煮」は、名前のユニークさもあって全国でも知られるようになった。イチゴを煮ているわけじゃなく、見た目が「野イチゴに似ている」というのが名前の由来であります(最後に詳しく解説します)。ざっくり言うと、ウニとアワビのお吸い物なのだが、1980年に缶詰化されたおかげで家でも手軽に食べられるようになった。

 ちなみに、地元の人たちはこの缶詰をお吸い物としてではなく、炊き込みごはんにして“増量”して食べるのが一般的だ。今回の“CAN”P料理も八戸市民に習い、増量メニューにしましたぞ。

■汁だけで酒がすすむ

いちご煮缶の内観。右は沈んでいる具をすくった様子

 いちご煮缶の中は乳白色の汁で満たされていて、他にはなにも見えないから一瞬「具が入ってないかも?」とドキッとする。しかし、ご安心ください。ウニとアワビは重いから、下に沈んでいるのだ。

 アワビはひと口大にカットされていて、スプーンですくうとその弾力がわかる。ウニはひと腹ずつ入れられているが、輸送の段階で揺られたりして、粒がばらけているものもある。でももちろん、味は変わらない。

 立ち昇る香りには貝類に多く含まれるコハク酸の濃厚なうまみが感じられ、汁をひと口すするだけで清酒がすすんでしまう。本当にけしからん缶詰である。