■ロープや吊り橋で「アスレチック」を体感

十二ヶ岳の吊り橋にある「ひとりずつ渡れ」の看板(撮影・穂高カレン)

 行程の中で、最も過酷で長いのが十一ヶ岳から十二ヶ岳までの道のりだ。岩場やロープ、大きいアップダウンが続き、これまでは次々と見えてきた「〇ヶ岳」の看板がなかなか出てこない。まるで「ラスボス」のような存在に思えてくる。

 途中、富士山や西湖を眺めながら山道と岩場を進むと、名物の「吊り橋」が見えてきた。長さは7〜8mほどだろうか。吊り橋の手前には「ひとりずつ渡れ」の看板が掲示してあり、この文言が恐怖心を引き立てる。一歩踏み出して足をのせてみると、ガタン! と揺れ動いて心臓が飛び跳ねた。それでも、吊り橋はしっかりとしており、慎重に歩けば危険はなさそうだと感じた。

 橋を渡り終えてからも、まだ油断は大敵だ。目の前には傾斜角90度に見える岩場が高さ10mほどにそびえ立っている。ロープが設置されているので、ここが登山コースに違いない。「まさか、ここを進むなんて」と岩を見上げてしばらく茫然とした。人気テレビ番組『SASUKE』に登場する「そり立つ壁」が脳内をよぎる。ロープや岩を握ってバランスを安定させ、手足の推進力でよじ上った。

十一ヶ岳と十二ヶ岳の間にある名物の吊り橋。渡った先はそり立つ岩場だ(撮影:BRAVO MOUNTAIN編集部)

■雄大な富士山が拝める山頂

十二ヶ岳の山頂からは雄大な富士山が見える(撮影:BRAVO MOUNTAIN編集部)

 吊り橋からいくつかの岩場とロープを越えて、やっとの思いで標高1,683mの十二ヶ岳山頂へ到着した。「十二」の文字が目に入った時は、安堵感と達成感でうれしくなり思わず「やっと着いた!」と叫んでしまった。山頂からは富士山を近くに見ることができる。その雄大な美しさに、富士山がこれまでの登山を見守ってくれていたような気がした。

 岩場やロープを使う場所が多いため登山初心者には難易度が高いが、迫力ある岩登りに挑戦したい中級者以上のハイカーは、一度訪れてみてほしい。登山道に設置されたロープや吊り橋はしっかりとした強度で、慎重に進めば危険な箇所はほとんどないように思えた。スリル満点なコースのため、十分な登山経験のある鎖場・岩場好きにこそ、強くおすすめしたい。岩場の経験が不十分な人は出掛けないようにしてほしい。なお、ロープが設置されている場所だからといって、ロープを過信するのではなく、注意深く進むことが大切だ。

 4年ぶりとなるノーマスクの夏。解放感あふれる自然の中で、十二ヶ岳の魅力を堪能した。あなたも森林に包まれながら、思いっきり体を動かしてみてはいかがだろうか。

 

●【MAP】