長野県と新潟県にまたがる9つの市町村を総称して“信越自然郷”と呼ばれている。そこにある信越(北信)五岳と称される5つの単独峰は、このエリアのシンボルだ。

■全国的にも珍しい5つの単独峰の連なり

 長野県北部と新潟県にまたがった9つの市町村(飯山市、中野市、妙高市、山ノ内町、信濃町、飯綱町、木島平村、野沢温泉村、栄村)を“信越自然郷”と呼んでいる。雪の多い日本海性気候と乾いた内陸性気候が同居する地域は、手つかずの自然の宝庫だ。岩稜帯、ブナ林、湿地、雪渓、湖など、バリエーションに富んだ豊かな地形が残っている。

 なかでも、長野県と新潟県の県境にある開田山脈を走る長距離縦走路「信越トレイル」は、こうした自然と調和する人々の歴史や文化・風土に触れながら歩けるトレイルとあって、国内外を問わず注目を集めている。いまや日本を代表するロングトレイル発祥の地と言っていい。

信越五岳 左から飯縄山、戸隠山、黒姫山、妙高山、斑尾山

 その一方で、この地には古くから人々に親しまれている山がある。それが信越五岳だ。とくに中野市や山ノ内町、小布施町、須坂市からは、上の写真のように順序よく並ぶその姿が拝める。右から斑尾山、妙高山、黒姫山、戸隠山、飯縄山。5つの単独峰を総称して信越五岳と言う。全国には白馬三山や越後三山といった〇〇三山は数多くあれど、五山になるとその数はめっきり少ない。ましてや5つの単独峰が連なって見えるのは全国的にも珍しいのだ。

 五山はどこも登山口までのアクセスが良く、登山ルートも整備され、日帰りでの山登りが可能だ。唯一戸隠山は険しい岩稜帯を登るため、技術や経験が必要だが、それ以外は山歩きが存分に楽しめる。ここではそんな信越五岳の概要を伝えよう。

■斑尾山(まだらおやま) 唱歌「ふるさと」に歌われる山【三百名山】

標高:1,381m
歩行タイム:約4時間(斑尾高原ホテル〜かえでの木トレイル分岐点〜仮山頂〜斑尾山頂[往復])

黒姫山や妙高山、遠くには北アルプスを望める大明神岳からの眺望。眼の前には野尻湖が広がる

 信越五岳のほかの四山は一列に並んでいるのに対し、ただ一つ東に離れ鎮座する斑尾山。五岳のなかで最も低い標高だが、山頂から四方へと複雑に尾根が張り出し独立峰らしい風格を漂わせる。ブナやミズナラをはじめ落葉広葉樹の森歩きが気持ち良く、山頂から約10分の大明神岳は眼下に野尻湖が望める絶景。

豪雪地帯を象徴する美しいブナの森。瑞々しい木々の周辺には多くの生き物が生息している

■妙高山(みょうこうさん) 信越自然郷を代表する名峰【百名山】

標高:2,454m
歩行タイム:約6 時間30 分(妙高高原スカイケーブル〜大谷ヒュッテ〜天狗堂〜妙高山頂[往復])

火打山から見た妙高山。中間地点にある高谷池には美しい高山植物が咲き誇る湿原が広がる

 2,000m級の外輪山に囲まれ、後方に聳える火打山とともに日本百名山にも選ばれている。広い裾野を抱え、活火山らしい美しい山容が目を引く。妙高スカイケーブルを利用すれば日帰り登山もできる。ブナの原生林の急登を越えて踏む山頂は歩きごたえ十分だ。下山後は赤倉温泉や関温泉など名湯に浸かりたい。

妙高山の南の玄関口、笹ヶ峰に位置する乙見湖