温泉は、いつの季節でも気持ちのいいものだ。とりわけ、冬の温泉は格別。冷えた体に温泉がしみわたる感覚は、病みつきになる。

 今回は冬の温泉をさらに楽しむため、わざわざ山に凍えに行ってから、温泉で温まる、『ゆるキャン△』でも有名となった「マッチポンプ」のような企画を提案したい。

 マッチポンプとは、自らマッチで放火したのち、それをポンプの水で消火して見返りを求める、といった自作自演を表す和製英語。『ゆるキャン△』では、主人公「志摩リン」が、自らバイクで凍えて温泉で温まる状況を「マッチポンプ」と表現したのは有名な話だ。

 このような、罪のない「マッチポンプ」という表現がウケ、ファンの間では「マッチポンプ」は志摩リンの名言と言われている。

■目的地は、武庫川渓谷の武田尾温泉

 今回のマッチポンプ企画の現場に選んだのは、「武庫川(むこがわ)渓谷」にある「武田尾温泉」。武田尾温泉は、兵庫県宝塚市と西宮市の市境の山中に位置する。市境を分けるのは武庫川渓谷だ。

武庫川渓谷に架かるつり橋、武田尾橋(撮影:野口宣存)

 武田尾温泉は「徳川家康」に敗れた豊臣方の落武者、「武田尾直蔵」が発見したと言われており、地名の由来となっている。

 徳川の落武者狩りをも逃げ切った秘境の地。武田尾は谷間の奥深いところにあり、日当たりも悪く、冬はたいそう寒い。

 今回の企画のポイントは、自ら凍えに行く点。武田尾温泉は廃線ハイクも有名だが、温泉からは少し離れており、よい運動になってしまう。そこで、ほとんどの人が知らないであろう「裏」廃線ハイクを敢えてチョイスした。

武庫川渓谷沿いの裏廃線ハイク道に転がってた、イノシシらしき頭骨(撮影:野口宣存)

 「裏」廃線ハイクは武田尾のなかでも、特に日当たりの悪い1本道だが、道もよく距離も短いため、危険も少ない。さらには駅も近く、湯冷めの心配も無用だ。

 要するに武田尾温泉は、今回のマッチポンプ企画のためにあるようなスポットなのである。