新型コロナウィルスの感染拡大によりやむなく海外取材を断念してきた人は多い。だが、オミクロン株の終息とともにアジア諸国でも国境を開ける国が増えてきた。2022年の10月、アジアの国々を取材してきたジャーナリスト室橋裕和氏は約3年ぶりに日本を飛び出し、アジア取材の旅に出発した。

※掲載情報は2022年10月取材時のものです。

■越えて国境、迷ってアジア 【ネパール2022】

 実に3年ぶりの旅立ちとなった。

 憎きコロナがもたらした世界的入国制限によって、日本に幽閉され続けた月日の長さよ。これほどの期間、海外に出なかったのは恐ろしいことに30年ぶりなのである。

 だがオミクロン株の終息とともに、どの国も国境を開けはじめた。面倒な入国後隔離もPCR検査も少しずつ緩和されていくのを見て、僕もぼちぼち行こうと決めた。ちょうど日本に暮らすネパール人の取材のために、現地に向かう必要が出てきたのだ。

 ネパールは考えてみれば20年くらい行っていないから変化を見てみたいというのもあったし、なにより僕は南アジアの雑踏と人ごみと混沌の中に揉まれて、そう「密」になりたかった。ソーシャルディスタンスなんかクソくらえだ。旅を再開するなら徹底的に「密」な南アジアからだ、と僕は思っていたのだ。

ようやく国境を越える旅が本格的に再開するのだ