<後編>重要文化的景観「ヨシの群生地」と、歴史・文化・グルメの近江八幡をめぐる旅

 関西・中部エリアのパドラーが、こぞって訪れる桜の名所がある。滋賀県近江八幡市内にある水郷エリア(湖沼周辺の広い湿地帯)にその場所はあり、水の上から眺める桜とのどかな田園風景が同時に楽しめるとあって人気が高い。初心者でも行きやすく、お花見ランチスポットもあり、スタートとゴールが同じ場所なので、周回できるのも人気の理由だ。周辺の見所も多く、川旅のシーズンインとして最高の場所の一つである。

■近江八幡水郷めぐりとは

 琵琶湖のほとりにある風光明媚な街、近江八幡。ここはかつて豊臣秀吉が、近江の国の中心地にするために、甥の豊臣秀次に命じて八幡山城を築かせたのが始まりだ。秀次はこの場所に八幡堀を作って琵琶湖の舟の往来を可能にし、近江国の経済を大いに発展させた。

八幡堀。この地の発展が近江商人の隆盛へとつながった

 近江八幡水郷めぐりは、その秀次が宮中の舟遊びを真似て、水郷地帯へと近従と共に舟めぐりをしたことが発祥といわれている。現在ではその故事にならい、手漕ぎの観光和舟がお客さんを乗せて往来し、大いに人気を得ている。舟頭が櫓と竿を巧みに操るその様は非常に風情があり、周辺ののどかな風景と相まって写真愛好家たちからも人気があるのだ。

 その水郷めぐりのルート上には、桜並木沿いに流れる水路を行く場所がある。水の上から眺める桜はなんとも風情があり、また流れも穏やかなため、いつしか多くのパドラーたちも訪れるようになった。この場所を航行することには特に許可などは必要ないが、あくまでも観光和舟の往航を優先すること。基本的に和舟は一方通行で運行しているので、舟の動きを見て逆走しないようにしよう。それらも踏まえて、今回は一般的なルート(1周約3.5km)をご紹介する。