「昨日ならパウダー(スノー)間違いなしだったのにな〜」

 そんな思いから、あまり期待せずにゆっくりめにスキー場に到着した。場所は長野県最北端、栄村にある「さかえ倶楽部スキー場」。架かっているリフトは3本だけの“こじんまり”したスキー場だ。

 北信州の奥地、首都圏から来る人にはかなり遠く、空いていることが多い。平日なら前後に滑っている人がいない、「貸し切り」状態のことも珍しくない。いわゆる“穴場”スキー場だ。

 けれど実は「知る人ぞ知る」ツウ好みの魅力に溢れたスキー場である。“1月と2月の平日は(一部のコースを除き)非圧雪”宣言をしている! 極力圧雪している面積を減らしていて、新雪が降った後ならパウダーを思う存分滑れるのだ。

■今日はスノーコンディションには期待してなかったが……

駐車場からスキー場を見上げる。手前の第3リフトは運行状況をチェックして

 山は白く、非圧雪の雪面に刻まれたトラック(滑った跡)は少なく、まだまだノートラック(滑った跡がない雪面)を滑れそうだ。

 だが、シーズン後半に降った雪は、昨日1日で気温と日射で早くもフレッシュ感を失っていて、“ギュッ”と密度が高く重そうだ。ベタついた重い雪に苦戦しながら足がパンパンになるのか、みんなが滑ってガタガタのまま凍っていて弾かれてしまうのか、ストップスノー(滑りが悪くブレーキがかかるような雪質)になってしまってスノーボードが全然“走らない”のか……。いずれにせよ、楽しめるイメージは湧いてこない。

 昨日なら間違いなくパウダーを滑れたのだが、残念ながら仕事の都合もあって、そう上手くタイミングを合わせられない。恨めしい目で斜面を睨みながらリフトに乗った。

■(いい意味で)期待はずれのクリーミーな湿雪に快感!

非圧雪斜面が多いだけに降雪後はノートラックが楽しめる。「まむしコース」

 まずは圧雪バーンへ。ピステン(圧雪)のかかった斜面はコーデュロイ状で残っているところもまだ目立っていた。滑りこむと想像以上に板(スノーボード)が“走る”! 柔らかいためにエッジも入りやすくて気持ちよくカービングターンが決まる。

 そのまま脇の非圧雪バーンに入ると…… 「やわらかい!!」

 すっかり湿雪(しっせつ)になっていたのであまり期待していなかったのに、これまた板が“走る”! しかもクリーミーな感触で、ふわふわのパウダースノーとはまた違った、しっとりとした上質な滑り心地。エッジの引っかかりもなく、スムーズにターンすることができる。半信半疑で滑り出したのもすっかり忘れて上機嫌だ。

 どうやら、前々日に積もった30cmほどの新雪が、気温が上がって溶けることもなく、昨日1日を経て熟成したような雪だった。