■唯一無二のスリルを味わえる畑薙大吊橋

 歩き始めておよそ45分。木々の間から突如として現れるのが、全長181mの「畑薙大吊橋」である。この吊橋の構造は非常にシンプルだ。吊橋は鉄骨のフレームや厚い床板を使用したものが一般的であるが、畑薙大吊橋は木の板をワイヤーで支え、鋼板を置いただけという最小限の構造。

 橋を支えるワイヤーはたった数本だ。両サイドのネットも最低限である。ここまで質素な吊橋は、日本全国探しても少ないのではないだろうか。板と板の隙間からは真下の谷が見え、高さ30mを実感させられる。スリル好きにはたまらない橋ではないだろうか。

木の梁に鋼板を置いただけの構造。ミシミシと鳴る音と揺れがスリルを倍増

■吊り橋を渡った者にだけ見える景色

 吊り橋の中ほどで立ち止まり、四方を見渡せば、これまでにない開放感が全身を包む。眼下には深い谷、遥か前方には南アルプスの名峰・茶臼岳や上河内岳。山好きにはたまらない眺望が広がる。登山者でなくても、この景色だけは見ておいて損はない。畑薙大吊橋は、まさに「歩いた人が味わえる絶景」の一つといえる。

吊橋の上から望む南アルプスの峰々

■畑薙大吊橋を越えた先の世界

 畑薙大吊橋は、観光地化されていないからこそ味わえる本物の自然体験ができる。スリルを求める者、南アルプスの絶景を愛する者、静かに自然と向き合いたい者にとって、「行く価値のある場所」である。

 また、畑薙大吊橋を越えて登山口経由で茶臼岳山頂までは約7時間、小屋泊まり必須の本格的な登山ルートとなる。ツーリングまたはサイクリングとハイキングを組み合わせた楽しみ方で、大自然に囲まれた「秘境と絶景のアトラクション」 畑薙大吊橋を訪れてみてはいかがだろうか。

畑薙大吊橋を超えて1時間程度歩くと、そこには大自然が広がっている
畑薙第一ダム駐車場から畑薙大吊橋までの地図(国土地理院地図より引用)

畑薙第一ダムから畑薙大吊までの舗装路コース橋所要時間
畑薙第一ダム(0:00)→茶臼岳登山口(0:45)→畑薙大吊橋対岸(1:15)→茶臼岳登山口(1:45)→畑薙第一ダム(2:30)
歩行距離:約8.5km
累積標高差:登り 312m、下り 312m
合計所要時間:2時間30分

畑薙第一ダムまでのアクセス
静岡駅から車で約3時間(約90km)
新東名「静岡IC」または「島田金谷IC」から国道362号・県道60号経由
公共交通機関でのアクセスは困難なため、車またはオートバイ推奨

●【MAP】畑薙第一ダム