「いつかアルプスに登ってみたい」。登山をやっていれば、多くの人の目標になるのはアルプス登山だろう。ただ、アルプスに容易に登れる山は少なく、多くは体力と技術、経験を必要とする。

 今回は初心者からのスキルアップにおすすめな「乾徳山(けんとくさん)」の登山ルートを紹介したい。山頂まではいくつかの大岩を登り、鎖場を通過することで経験を積んだり、鎖場に慣れるのにぴったりな山だ。

■樹林帯、草原、岩場、さまざまな山容を楽しむことができる乾徳山

遠くから見ると分かりにくいが、山頂付近は岩だらけ(撮影:山歩ヨウスケ)

 乾徳山は山梨県山梨市にあり、奥秩父山塊に属する標高2,031mの山で、日本二百名山に選定されているほか、山梨百名山や花の百名山にも選定されている。日帰りも可能な山で、樹林帯や草原、岩場までバリエーション豊かな山容は登っていて楽しい山だ。

 1330年ごろ、乾徳山は夢窓国師が修行をした山で「座禅石」や「髭剃岩」、「カミナリ岩」など名の付いた奇岩が多く、山岳信仰があったとされ、日本百霊山にも選定されている。

髭剃岩。割れ目があり、人が通ることができるおもしろい岩だ(撮影:山歩ヨウスケ)

■徳和駐車場から登山口〜国師ヶ原十字路へ

 乾徳山へのアクセスは国道140号線から県道209号線を経由し、徳和集落へ向かうと登山者が利用できる駐車場がある。近隣には住宅が密集しているので、早朝や深夜に到着するのであれば住人には配慮したい。駐車場から集落を抜け、林道を30分ほど歩くと登山口が見えてくる。

乾徳山の登山口。看板があるので迷うことはない(撮影:山歩ヨウスケ)

 登山口からは針葉樹の樹林帯となり、静かな杉林の中を楽しみながら歩くことができる。

登山口からは杉の樹林帯。勾配もそこまで急ではないので気持ちよく歩ける(撮影:山歩ヨウスケ)

 針葉樹だった樹林帯はやがて広葉樹に変わり、木々も程よい間隔になってくるので日が差し込むようになる。

 登山口から1時間ほど歩いたところに「錦晶水(きんしょうすい)」という名の水場がある。ルート上に水場があると、麓から持参する水の量を減らすことができるのでありがたい。

パイプが設置されているので水は汲みやすく、顔なども洗いやすい(撮影:山歩ヨウスケ)

 水場から10分ほど歩くと「国師ヶ原十字路」に到着する。この十字路は乾徳山へ向かう2つのルートと、徳和集落へと続く2つのルートがぶつかる十字路となっており、立派な小屋が建っている。「高原ヒュッテ」はかつては山小屋として営業されていたようだが、現在では無人の避難小屋として通年開放されている。

外観もそうだが、中もすごく綺麗。利用者のマナーがいいことが分かる(撮影:山歩ヨウスケ)

 高原ヒュッテからは登りが急になってくるが、樹林帯だった登山道は草原に変わり、富士山の景色を楽しむことができる。

高原ヒュッテから登山道を進むと見えてくる富士山(撮影:山歩ヨウスケ)