夏は暑くて大変な里山・低山も秋になると涼しく快適に登る事ができます。さらに紅葉のタイミングと合わせれば“紅葉狩り”も楽しむ事ができるのが、この季節ならではの楽しみですね。

ランドマーク的存在の奥裾花大橋。ちょうど色づき始めていました

 長野県北信地方、長野市鬼無里(きなさ)の奥地にあるのが「奥裾花(おくすそばな)自然園」。そこから比較的短時間で往復できるのが「中西山」です。標高は1,741mで周辺の山々と比べると低く知名度もありませんが、麓には豊かなブナの森、ほとんど人の手の入っていない原生林が広がっています。北は新潟県境の金山から白馬村へ連なる主稜線の西側は小谷村です。筆者が所属する小谷(おたり)山案内人組合がある小谷村からの登山道もその昔はあったようですが、現在では廃れて藪に埋もれてしまっています。

 この時期、駐車場から奥裾花自然園までは車道を歩いて(一部ショートカットできる登山道も有り)いく事になります。往復で1時間ほど余分にみておきましょう。

山頂に向かう稜線。狭く足元の藪に引っかかる場所もありますので気をつけて

 自然園入り口の脇にある登山口から一歩足を踏み入れると景色は一変します。人工物はいくつか設置されている道標と沢に架けられた小さな橋くらい。視界を埋め尽くすほどの黄色く紅葉した木々に囲まれていると、まるでファンタジーの世界に迷い込んだようです。落ち葉のカーペットが敷き詰められた原生林の中を縫うように進むと徐々に傾斜が急になっていきます。やがてミズナラの割合が増え、さらにひと登りすると稜線へと躍り出ます。振り返ると高妻山、乙妻山が隆々と聳えています。残念ながら、山頂にかけてはそれほど見通しが良くありませんが、ときおり樹間から真新しい雪を被った北アルプス北部や妙高山など、周囲の山々を垣間見ることができます。

 中西山の山頂までは標高差約500m、1時間30分ほどです。コースタイムこそ短いものの、急で狭い箇所や草藪が生い茂り足元が不明瞭なところ、滑りやすい部分もあります。そのせいもあり、下りも1時間15分くらいかかります。すでに日が翳るのも随分と早くなっています。登山をするなら防寒対策をしっかりして、余裕のある計画で!

交互に積み重なった硬い地層と柔らかい地層が隆起した後に浸食を受けてできた「ケスタ地形」。奥裾花渓谷

 今回は入園しませんでしたが、奥裾花自然園でもブナの紅葉を楽しむことができます。奥裾花大橋から自然園入り口までの道中も紅葉と渓谷美が素晴らしいです。さまざまな地層と絶壁を舞台にして赤や黄色の紅葉と裾花川が美しいコントラストを見せてくれます。早めに下山したらドライブがてらの紅葉狩りを楽しめますよ(一部一方通行です)。