2019年の6月に老朽化のため惜しまれながら閉場した「那覇市第一牧志公設市場」が、2023年3月19日にリニューアルオープンした。じつに3年9ヵ月ぶりとなる。当日はオープニングセレモニーも行なわれ、多くの人で賑わった。

那覇市第一牧志公設市場 https://www.makishi-public-market.jp/

 

 閉場される直前の2019年に撮影された、旧第一牧志公設市場周辺に暮らす島猫たちの様子をお届けしよう。

■市場の猫「マチグヮーは島猫ラビリンス」

シマネコキネマの事務所裏口に週1ペースで通い、無言でエサを要求するキジ猫様

 市民の胃袋にして、沖縄を代表する観光スポットでもある那覇の公設市場、通称マチグヮー。牧志第一公設市場を中心に市場本通り、むつみ橋通り、平和通りなどのアーケード街が広がり、さらにその間を縫うようにして、蜘蛛の巣のごとくスージグヮー(筋道)が張り巡らされている。まさに迷宮と呼ぶにふさわしいこの界隈を、人間とは違う目線で知り尽くしているのが島猫たちだ。

アーケード街には人も車も通るが、いちばん我がもの顔なのは島猫たちだ
アーケードの屋根の上にも島猫たちの通り道があり、昼寝をする姿もよく見られる

 人間たちはこの界隈を3Dで見ているのだが、島猫たちは(たぶん)4D感覚で暮らしている(と思う)。市場界隈にある、我がシマネコキネマの事務所にも通い猫がいるのだが、彼らは半径100mくらいのテリトリーの中にいくつもの餌場となる店を持っていて、店ごとに違ういくつもの呼び名を持ち、堂々と渡り歩いている。

 人間には絶対に通れないビルとビルとの間の路地や、アーケードの屋根の上も彼らの通り道であり、その中に「あの世」につながる異次元ポケットや「どこでもドア」があったとしても何の不思議もない。

那覇マチグヮーの商品陳列台は、しばしば島猫の寝場所になる
この猫が角を曲がった途端にすっと消えても、なんだか納得してしまう雰囲気がある

 市場には食べ物を扱う店が多いので、ここで暮らす島猫たちも満ち足りていることが多い。店主に飼われて看板猫になれば、そのニャン生は空腹とは縁がないので、店先での昼寝が主な仕事となる。陳列台の上でのんびりと島猫が昼寝している風景は、那覇のマチグヮーの風物詩とも言えるだろう。

 シンボルでもある牧志第一公設市場が老朽化による建て替えで、2019年6月30日をもって今の姿での営業は終了となる。建て替える際には、目には見えない島猫たちの四次元ポケットも、そのまま移設していただけるとよいのだが……。

「TABILISTA」【琉球島猫百景 vol.23】(2019.5.23)より