山の中でスキーを使って長距離移動の速さを競う山岳スキー競技「SKIMO」。特にヨーロッパで人気の競技だ。「2026年ミラノ・コルティナオリンピック」に新種目として追加されたことで注目を集めている。

 その世界には、数千人規模で競技が行われるLGCというビックレース・シリーズがある。そのなかでも規模、難易度、人気などが突出した大会が3つあり、ビック3と呼ばれる。そのひとつ、フランスで行われた「ピエラメンタ」に出場してきた!

■SKIMOの世界でもっともテクニカルなレースといわれるピエラメンタとは?

世界屈指の難レース! ピエラメンタの過酷なセクション

 ピエラメンタとはフランスにある山の名前。今ではその山の名前を冠した大会名の方が、山の名前以上に認知度が高いかもしれない。それほどまでにフランスでは絶大な人気を誇るSKIMOのビックレースがピエラメンタだ。レース会場はサボア県のアレッシュ・ビューフォートという町。周囲を山々に囲まれた、山岳地帯にある街で、チーズの名産地としても有名な地域だ。

 レースは2人1組で行うチームレースとなる。4日間のステージレースで、コースは毎回異なるルートが設定される。参加チーム数は200チームに限定されるため、大会に申し込んでもセレクションを通過できるかどうかは分からない。大人気ゆえにその倍率が非常に高く、参加申し込みがひとつの難関でもある。

 37回目となる2023年の大会は、3月8日から11日までの4日間で行われた。

■SKIMOがヨーロッパで大人気! その大きな理由がLGC・ビック3の存在

スタートに並ぶ大勢の選手。厳しいレースだがピリピリとした緊張感はない

 2026年ミラノ・コルティナオリンピックの追加種目入りしたことで、一気に注目度が高まっているSKIMOだが、もともとヨーロッパを中心に絶大な人気がある。その盛り上がりを支えてきたのがラ・グランデ・コース(LGC)というSKIMOロングレース・シリーズだ。

 なかでも特に人気が高い3レースがビック3と呼ばれている。それはスイスで行われる「PDG」、イタリアで行われる「メッツァラーマ」、そして今回筆者が出場したフランスのピエラメンタだ。LGCに登録してレースに出場する選手は3万人以上。これは出場者の延べ人数ではなく、レースエントリーに毎年必要となるLGCの会員登録者数だ。これに加えて、レースの観戦を目的として会場に足を運ぶ人の数は、大きなレースでは何千人という規模となっており、その人気具合がうかがえる。

■4日間のステージレースはトータル10,000メートルを登る過酷なコース!

登り、滑り、ともに旗が設置され、トレースもつけられているので迷うことはない

 ピエラメンタの面白いところは、37回の大会のなかで決まったコースというものが存在しない点だ。決まっているのは、開催地となる「アレッシュ・ビューフォート」、レース日程は4日間、トータルの登り総標高差が10,000メートルになるよう、日々コースが考えられる点だ。

 実際、今回の大会も1週間ほど前に暫定のコースの高低図が公開されたものの、大会第一日目から変更されている。その後も天候や雪の状態を考慮して、コースは前日に決まり、夕方のブリーフィングで発表される。

 ピエラメンタはビック3のなかで、もっともテクニカルなレースと言われている。決ったコースではないという点もそうだが、コースに設定される滑りのセクションの難易度が高く、体力勝負のロングレースではない点が特徴的。4日間の長丁場でどっぷり山とスキーに浸り、スキーアルピニズムを追求するのが目的だ。