美ヶ原は長野県松本市と上田市の境に位置し、日本百名山です。冬はビーナスラインが冬季閉鎖になり、アクセスがしづらくなりますが、広大な美ヶ原牧場の一面の銀の世界は観る価値のある景色です。

 「美しの塔」は、山本小屋から歩いて20分程度の散策で到着します。朝焼け、夕景、星空の撮影を狙いやすく多くのカメラマンが訪れる人気スポットです。私も1月に2度訪れました。1度目はロケハンを兼ねて、2度目はこう撮りたいと思い描きながら撮影に臨みました。

■寒さこたえる! 美ヶ原の冬の朝

月あかりに照らされる「美しの塔」越しの王ヶ頭ホテル この日一番最初に撮影したもの

 まだ暗い早朝5時に山本小屋へ到着しました。夜の雪道、車の運転にかなり緊張したので、すでに疲労感がありましたが、到着すると小屋の方はすでに動いている様子に少し安心感が……。1度目は他にも撮影者がいました。2度目は私ひとりでした。温度計はマイナス12℃を示し、車から出るのが億劫になりながらも支度をします。全身ダウンを着用すると、寒さも気にならなくなり元気とやる気が出てきました。

 小屋から歩き出してすぐに月明かりに照らされる北アルプスと要塞のような王ヶ頭ホテルが遠くに見えてきます。すぐ「撮影スイッチ」が入り、シャッターを切る手が止まらなくなりました。寒くてなかなか思うように指が動かないんですけどね。

■爆風の中に広がる絶景

ビーナスベルトが一番濃くなった時に、月と王ヶ頭ホテルを撮影

 2度目に訪れた日は、風速20m前後の厳しい日でもあったため、撮影者が誰もいませんでした。雪原で遮るもののない風の威力は凄まじかったです。“爆風”の中、三脚を固定して、夜景から朝焼けの撮影を頑張りました。前回のロケハンの甲斐のあるところと、やはり全く同じ景色ということはなく北アルプスは雲の中だったのが残念でした。

 6時になると東の空がオレンジに染まり始め、空のグラデーションが楽しめます。暗闇で爆風の不気味な世界が明るくなっていくのを感じます。そこからモルゲンロートとビーナスベルトの、空や雪原が色づく時間帯は瞬間的に色が変わって行くので撮影が忙しかったです。しかも360度絶景なので、どこを切り取っても最高です。この時期は、日が出るのは7時くらいです。