スキーやスノーボードのエッジチューンナップが必要なのはレーサーだけではない。フワフワのパウダースノーであってもエッジの状態は滑りに影響を与える。

 自分でエッジのチューンナップができるようになれば用具の理解が深まり、技術向上にも役立つ。エッジチューンの技術を習得するなら、まだ暖かい季節がお勧めだ。

■滑走用具のエッジチューンナップの必要性

きれいなエッジは自由自在に雪を滑るために必要不可欠。どこまで仕上げられるかは、腕前次第だ

 スキースノーボードなどの雪上滑走用具は滑走性を高める滑走面と雪面をグリップしてターンするためのエッジがついている。滑走面はワクシングをすることで手入れをするが、エッジはどうするのだろうか? 錆びを落としておくというのは、基本中の基本。そこから一歩進んだエッジの手入れ、チューンナップとは、削ることで角度を一定に保ち、磨き上げることだ。

 滑走中、エッジは常に雪に接している。実は滑走面以上に滑走時の雪面抵抗を受けているのはエッジである。そのため、このエッジが錆びていたり、石を踏んでバリがでていたりすると、そこが引っかかり滑走性に大きな悪影響を与える。

錆びたままのエッジは引っかかる。気がつかないところで足を引っ張られているようなものだ

 また、エッジの角度が板のトップからテールまで均一になっていることは、ターン中の安定感や操作性を高める。きれいな雪上だけを滑っていても、ターン中にはエッジに大きな力がかかっているため、歪みやねじれが出てくる。そのため、定期的なエッジ角度の調整が必要になってくるのだ。

■自分でもできる! サイドエッジの研磨と準備する用具

サイドエッジを削る道具。様々なタイプが市販されている

 滑走用具のエッジには2つの「面」がある。板の滑走面側のエッジ面と、サイドエッジ面だ。滑走面側のエッジの角度調整は難しい。チューンナップに熟練した人以外は、削るなどの調整は行わず、バリ取り程度にしておいた方が無難だろう。必要があればチューンナップショップなど、専門の職人に調整してもらったほうが良い。

 一方、サイドのエッジ調整は市販の道具なども豊富で、一般ユーザーでも可能なチューンナップといえる。必要となる道具はいくつかあるので、これらは揃える必要がある。

 まずはエッジを削る道具だ。金属のエッジを削るのは、ファイルと呼ばれる金ヤスリだ。目の形状が特殊なためホームセンターなどではなく、スキーショップなどの専門店で購入する専用の物が必要だ。シャープナーと呼ばれる、初心者向けの簡易的な物もあるが、せっかくエッジチューンナップの技術を身につけようと思うなら、専用のファイルと角度を決めるアングルの組み合わせをお勧めする。

アングルにファイルを斜めにセットしてクランプで挟む

 作業を安全に、効率よく行うためにはチューンナップ台と板を固定するバイスも必要だ。場所をとるし、色々物が増えるが、滑りにこだわっていくなら必要な道具だろう。机などを流用しても良いし、DIYで工夫して自作しても良い。他には紙やすりや、仕上げに使用する砥石も必要になる。

■削る→磨く  エッジチューンの心得!

 では、実際に行うサイドエッジのチューンナップ手順を説明していこう。

ボーダーはエッジより低くなっていれば良いので、毎回削る必要はない。削りすぎてサイドウォールに傷がつかないよう気をつけたい

 まずは「ボーダー」と呼ばれるエッジの上の部分を削ってしまう。この部分は板の製造過程で必要な部分だが、エッジチューンには不要な部分。柔らかい素材なのでファイルの頭を使って削って、エッジよりも低くしておく。このボーダーがファイルに当たってしまうと、エッジがうまく削れない。ちなみに、このボーダーは板の種類によって素材、厚みは異なる。

筆者はテーピングを愛用しているが、怪我の予防に手袋をして作業をすることを推奨する

 滑走面を側面に、サイドエッジを上にしてチューンナップ台のバイスにセットする。アングルにセットしたファイルを手前に引きながらエッジを削っていく。

 コツはファイルに力を入れないこと。滑走面にアングルを押し当てながら、軽く、柔らかく削っていく。力を入れて押し当ててしまうと、ずれたときにエッジがガタガタになり、手を切ってしまう。滑走方向に合わせて、トップからテールに向って削るのが理想だが、右手と左手を器用に使い分けるのは難しい。

 大切なことは均一な角度でエッジを削ることなので、無理に両手を使い分けるよりも正確な削り方を心がけよう。

筆者は右利きなので、左エッジを削るときはテールからトップにむかって削る

 ちょっとした小技だが、筆者はエッジを削る際にヘッドライトを使用する。明るく照らすことで、エッジの削れた部分とまだ削れていない部分を確認しながら作業することができる。他にも、マジックでエッジに色をつけてから削る方法もある。

ファイルでの削り以上に重要な、砥石での磨き

 ファイルでサイドエッジの角度を調整したら、バリ取り。サイドエッジを削ると、必ず滑走面側にバリが出る。このバリはファイルを軽く当てることで簡単にとれる。そして、仕上げは砥石を使った磨きだ。ファイルで削ったエッジには細かい傷がついている。この小さな傷を砥石できれいに磨いていくのだ。この砥石作業はアングルを使わず、手感覚で行うので、せっかく角をだしたエッジを丸めてしまわないよう気をつけたい。

 ファイル同様、砥石もうまく使うには熟練が必要。最初は柔らかい水砥石が使いやすいが、よりシャープな仕上がりを求めるなら、乾式の硬い砥石がよい。最後に、滑走操作上引っかかりやすいトップとテールのエッジを紙やすりなどで丸めておく。どの程度丸めるかはそれぞれだが、自分で色々と試してみることで一番良いセッティングが見つかるはずだ。

 エッジは金属。硬いエッジは削るのが難しい。そのため、寒い冬よりも暖かい季節の方が削りやすい。雪上に立つのはまだ先だが、この時期からエッジチューンを始めておくことをお勧めする。オフシーズンに用具をチェックしておくことで、状態を把握できるし、自分で手に負えない場合にチューンナップショップなどにお願いする余裕もある。万全の準備をしてスノーシーズンを迎えよう。