長野県安曇野、北アルプスを見渡す犀川の河原にある「御宝田遊水池(ほうでんゆうすいち)」では、遠く離れた故郷シベリアへ向けて「コハクチョウ」の“北帰行(ほっきこう)”が始まっている。昨年10月中旬に初飛来が確認され、2月下旬には500羽以上訪れたハクチョウたちだが、どんどんと旅立っている。

※ 温暖な地域で越冬した鳥が、春になり北方の故郷へ繁殖に移動すること

 この冬は寒さが厳しいせいか、北帰行のスタートは遅れているようだったが、ここに来て一気に旅立ちのペースが早くなっているようだ。それでもまだ御宝田では198羽が確認されている(2022年3月3日)。3月下旬にはいなくなりそうだ。

 飛来地となっている池は、長野県安曇野市を流れる「犀川」のほとり。昨年夏の大増水によりダメージを受けたが、復旧して以前のような形を取り戻しており、駐車スペースもしっかりと整地してある。池の縁も歩きやすく、安心して観察することができる。

 水辺はハクチョウだけでなく、多くの水鳥たちが羽を休めるオアシスとなっており、子供たちや散策したり、写真を撮る人々……。さらに離れた場所には、長いレンズを付けたカメラでシャッターチャンスをうかがうカメラマンたちが並んでいる。人間にとっても憩いの場となっているよう。

 晴れてはいるものの、北風吹く河原は気温以上に寒さを感じる。白く大きな翼を広げ、常念岳など北アルプスを背景に飛び立つ姿は勇壮で、畏敬の念を感じる。目指すシベリアまでは4,000キロあまりの長く過酷な旅。無事にたどり着けることを祈るばかりだ。ハクチョウたちが全て旅立った頃、安曇野にも春の陽気がやってくるのだろうか。