秋が訪れ、紅葉が最盛期を迎えているところも多い。アルプスなどの高山のシーズンが終わりを迎える時期になると、標高の低い山が気持ちよく歩ける季節になる。

 今回は静岡県と山梨県にまたがる「天子山地(てんしさんち)」の最高峰「毛無山(けなしやま)」の登山ルートを紹介したい。

■富士山の西に位置する天子山地・毛無山

 天子山地は富士山の西に位置し、山梨県巨摩郡身延町と静岡県富士宮市にまたがり、「天守山地(てんしゅさんち)」ともいう。天子山地の最高峰になるのが毛無山で、日本二百名山に選定されているほか、山梨百名山や静岡百山の一座にも名を連ねている。

毛無山の最高点にある標識。鉄板をくり抜いて作られていてかわいい標識だ(撮影:山歩ヨウスケ)

■登山口は有名キャンプ場のすぐ近く

 紹介するルートは毛無山への最短ルートで、「麓登山口」からのルートだ。麓登山口へは国道139号線からアクセスするが、登山口駐車場までの道中に通過する「ふもとっぱらキャンプ場」は、某アニメの舞台ともなった人気キャンプ場である。キャンプ場から登山口までは歩いても行くことができるので、登山と一緒にキャンプを楽しむのもいいだろう。

 麓登山口は無人だが、有料駐車場で、設置されたポストに車のナンバーと駐車料金を投函する仕組みだ。ナンバーを記載する用紙とペン、現金を入れる封筒はポストの下にある。駐車料金は現金のみなので、前もって用意してから駐車場に向かいたい。筆者が利用した時の料金は、1日500円だった。

 駐車場から登山道に入るまでは15分ほどの林道歩きとなる。林道は道幅も広く、歩きやすい。登山道から歩き始めると、すぐに「麓宮(ふもとみや)」という名のお社がある。

麓宮は登山口のすぐ近くにある。道中安全をお祈りさせてもらった(撮影:山歩ヨウスケ)
登山口の駐車場から麓宮へ続く林道。登山道はこの先にある(撮影:山歩ヨウスケ)

 麓宮を通過し、しばらく林道を歩くと毛無山山頂への登山道が見え、登山道に入るとすぐに分岐がある。

 毛無山へは「地蔵峠」を経由するルートと、毛無山に直登するルートがあるが、地蔵峠へのルートは登山道の一部に崩落があり、“危険”との看板があるので直登ルートを選ぶ。

 毛無山への直登ルートを進むと、ここから山頂近くの稜線に出るまではひたすら急な登りになるので覚悟しておいてほしい。

 樹林帯の中を歩くので眺望はほとんど無いのだが、杉林を抜けたあたりから振り返ると木々の間から富士山を見ることができる。富士山が見える所を探しつつ、小休止をはさみながら焦らずに山頂を目指したい。

木々の間から見える富士山。よく見ると麓の「ふもとっぱらキャンプ場」のテントが見える(撮影:山歩ヨウスケ)

 毛無山は山頂まで1合目から9合目までの看板が設置されており、現在地の目安として把握できる。2合目を少し過ぎたあたりで「不動の滝見晴台」があると地図で確認し楽しみにしていたのだが、木々が成長したせいか、不動の滝は木々の向こうにわずかに見える程度で景色を楽しむことはできなかった。

 8合目を過ぎたところでようやく「富士山展望台」があり、遮るものがない富士山の景色を楽しむことができる。

目の前にそびえる富士山は迫力を感じる(撮影:山歩ヨウスケ)

 毛無山は麓登山口から山頂まで標高差が1,000m以上あり、登山者は一気に標高を上げることとなる。富士山の景色もいいが、同時に麓までの標高差を楽しみつつ、ここまで登ってきた達成感も感じることができる。

 富士山展望台から毛無山山頂までは約20分、登山口からは約3時間で到着することができる。到着した毛無山「三角点」の場所には山頂を示す標識があり、休憩するのにぴったりである。

毛無山「三角点」からの標識と富士山。木々に遮られ富士山がはっきり見えないのが少し残念(撮影:山歩ヨウスケ)