「たんばら」と聞くと、何を思い浮かべるだろうか。冬はスキー場として、夏はラベンダーパークとしてスノーアクティビティや観光を目的とした多くの人が訪れる「たんばらスノーパーク」を思い浮かべる人も多いかもしれない。

 そんな人気スポットである「たんばらスノーパーク」の少し先に、「玉原(たんばら)高原」のセンターハウスと駐車場がある。首都圏から2時間という高アクセスながら、関東屈指のブナ林や尾瀬と同じような植生の湿原を有する玉原高原は、のんびりハイキングを楽しみたい方にうってつけの場所だ。

■玉原高原とは

玉原高原手前の玉原湖より山並みを望む(撮影:笹田けいこ)

 玉原高原は群馬県沼田市の北部に広がる高原だ。東側の鹿俣山(かのまたやま・標高1,636m)の中腹には「たんばらスノーパーク」が広がり、夏はラベンダーパーク、秋にコキアパークとして営業している。さらにその東側にはキャンプ場やペンションなどがある。西側はブナの原生林が広がり、そのふもとに玉原湿原がある。これらを合わせた一帯「森林リゾート」が玉原高原だ。

■玉原高原のブナ林の紅葉は見事だ

ブナ林は標高差もあまりなく、快適に歩くことができる(撮影:笹田けいこ)
モミジの赤色の紅葉とはまた趣の異なるブナ林の紅葉(撮影:笹田けいこ)

 「たんばらスノーパーク」を通り過ぎ、少し行くと玉原高原センターハウスがある。玉原湿原散策、ブナ林散策、鹿俣山(かのまたやま・標高1,636m)登山、尼ヶ禿山(あまがはげやま・標高1,466m)登山の起点となる場所だ。センターハウスの駐車場に車を停めて歩き始めると、車止めの少し先に道の分岐がある。分岐では案内板が出ているので安心だが、玉原湿原、ブナ平、キャンプ場、鹿俣山など行き先が別れているので、目的地をしっかり把握しておく必要がある。

 ブナ林散策を目的とする場合は、最初の分岐から探鳥路と名付けられたルートを通ってブナ平を目指すのがよい。ブナ平まで約30分の行程だ。ブナ平はブナ林散策におすすめ場所だが、ブナ平までの行程も山域全体がブナの木で覆われている。

 また、ブナ平へのアクセスも探鳥路のほかに、湿原からの水源ルート、湿原の先の玉原越を経由してブナ平に至るルートなどさまざまな行き方がある。湿原を回ってからブナ林に行く場合は、帰りに探鳥路を使うとよい。水源ルートは距離は短いが、足元が悪いので要注意だ。

 玉原高原のブナ林は標高およそ1,300mの高地に樹齢400年のブナの巨木が林立する、首都圏から最も近いブナ林だ。2022年は10月25日頃が見ごろであった。関東屈指といわれるブナ林の紅葉は一見の価値がある。

■「小尾瀬」と呼ばれる玉原湿原の草紅葉に秋を感じる

首都圏から2時間、駐車場から15分で到着する小さな尾瀬の草紅葉(提供:沼田市観光協会)

 駐車場から徒歩15分ほどで、玉原湿原(標高1,178m)だ。玉原湿原はブナ林に囲まれた4.3ヘクタールほどの湿原で、小さな尾瀬のように見えることから「小尾瀬(こおぜ)」とも呼ばれている。

 尾瀬ほどの広大さはないが、ミズバショウなど尾瀬ヶ原と共通する植物も多い。1周30分程度のこじんまりとした湿原で、ブナの紅葉に囲まれた草紅葉も素晴らしい。手軽に湿原散策ができるのが一番の魅力だ。

 ミズバショウの見ごろは4月下旬から5月中旬、草紅葉の見ごろは10月中旬から下旬と、本家の尾瀬とは時期が少し異なるので、尾瀬の草紅葉を見逃した方にもおすすめだ。

 ブナ林と湿原を合わせて巡っても2時間程度で、軽いハイキングを楽しみたい方や、山登りは自信がないという方、家族連れの方にはちょうど良いハイキングコースである。