アヴィック山の登山道2日目は、山小屋バルブステルを拠点に周囲の湖群をめぐるルートを行くことにした。前日の猛烈なゲリラ豪雨から一転、翌朝は清々しい青空が広がっていた。アヴィック山自然公園は広大なテリトリー内の水が豊富なため、湖や湿原エリアがたくさんあり、登山道も特異な地層、動植物のほか、非常に示唆に富んだ風景で彩られている。足を進めるごとに目まぐるしく変わっていく景色が楽しめる湖群めぐりのルートをご紹介しよう。

■4,000m級の山々と湖が見渡せるラック・ブランの丘

 カフェとビスケットで簡単な朝食を済ませ、朝7時過ぎに前夜宿泊した山小屋バルブステルを出発。昨日の豪雨できれいに洗われたような透明な空気の中、爽やかな気分で歩き出した。この山小屋の周囲には、ヴァレット湖、ブラン湖、ノワール湖、コルヌート湖という4つの湖がある。今日のルートで最初に出くわしたのはブラン湖。地図上ではフランス語で「Lac Blanc」と表記されていて、「白い湖」という意味である。その隣に双子のようにくっついているのがノワール湖「Lac Noir」で、こちらは反対に「暗い湖」という意味。日の当たり具合によって命名されたのだろうか、と思いながらまずはブラン湖周辺が見渡せるラック・ブランの丘に登った。

 大きな岩がゴロゴロと連なる湖畔は滑りやすく、転ばないように気をつけながら歩いていく。澄んだ空気の中、朝の日差しに輝く湖面が鏡のように周囲の風景を写し出し、まるで美しい絵画を鑑賞しているような気分になってくる。湖面の先には、雪を頂くモンテ・ローザ山脈の勇姿が広がり、思わず歓声が上がった。

朝日に輝くブラン湖。背後にはマッターホルン山頂とモンテ・ローザ山脈の雪山が見える
周囲の氷河の雪解け水が湖に流れ込む。水がとても豊富なエリア
ラック・ブランの丘に登るとブラン湖と繋がったノワール湖、雪を被ったモンテ・ローザ山脈のパノラマが見える
標高2,166mのノワール湖から2,492mのグラン湖を目指して登り始める
急な登り坂ではあるが、壮大な周囲の風景に見惚れながら疲れ知らずで歩いていける