山形県の蔵王、秋田県の森吉山、青森県の八甲田山で見られる「樹氷」が「日本三大樹氷」とされている。今回はこのうちの一つである、秋田県森吉山の「樹氷」を筆者が以前訪れた（2020年1月と2021年2月）様子とともに紹介したい。
■樹氷とは？
まずは「樹氷」がどういうものかを知っておこう。氷点下になった樹木に水蒸気や水滴が氷となって付着する。高山帯に生育する樹木（アオモリトドマツなど）に付着した氷がさまざまな形状を生み出したものを樹氷と呼ぶ。それは自然が作り出した神秘的かつ芸術的な光景であり、大きくなったものは「スノーモンスター」「アイスモンスター」などと呼ばれている。「気温」「水分」「風向き」などの一定条件が揃わないと樹氷はできないとされ、世界的にもとても珍しい自然現象である。なお、天候にもよるが、森吉山の「樹氷」の見頃は1月中旬～3月上旬である。
■ゴンドラからの雪景色
森吉山の「樹氷」は、秋田県北秋田市の森吉山阿仁スキー場内の樹氷平で見られる。駐車場の目の前にあるゴンドラの麓駅から、樹氷平がある山頂駅までは約20分。ゴンドラは6人乗りだが、相乗りになるほど混むことは滅多にないため、ゆっくりと景色を堪能できるのが嬉しい。
ゴンドラでの移動中にも美しい雪景色が楽しめる。瞬きももったいないと思うほどの絶景が広がり、標高が上がるにつれ景色も変わっていく。麓〜中腹は落葉樹が多く、雪が付いて白くなった枝が神秘的だ。山頂にある山麓駅が見えるようになると、いよいよ樹氷が見えてきて、期待が高まる。
■樹氷平へ
山麓駅に着くと、樹氷観賞期間中（2024年は1月6日～3月3日）に常駐している樹氷スタッフが、装備のチェックやアドバイスをしてくれる。ここでは長靴・スノーシュー・スノーストックの無料貸出があるので、雪上歩きに慣れていない人や、装備が不安な人は借りて行くことをおすすめする。
山麓駅から樹氷平までは徒歩5分ほど。圧雪された歩きやすい道だが、急な登り坂なので慎重に歩こう。
■樹氷を見ながら散策
樹氷平に着くと、モンスターのように大きな樹氷が出迎えてくれる。高さは5m程で、迫力満点だ。樹氷平の入口では記念撮影ができ、ここだけでも十分に迫力ある樹氷を楽しめるが、天候が悪くなければ1周20分ほどの樹氷平散策に行ってみよう。樹氷の間を縫うように歩いたり、開けた場所で樹氷を眺めたりと、さまざまな角度から「モンスター」を観察できる。
筆者が散策したとき（2021年2月）は降雪量が多かったため、足が埋まりそうで歩きづらかった。それに加えて風も強く、かなり寒かったが、樹氷に囲まれながらの散策は異世界に迷い込んだようで面白かった。
樹氷平では雪の量や天候などによって、行く度に違う形の「樹氷」が見られる。2020年はとても雪が少なく、アオモリトドマツの葉が見えるほどだったが、2021年は降雪量が多く、立派な樹氷が見られた。行く度に違う姿の「樹氷」が見られるので、何度も足を運びたくなるのだ。
■山麓駅にも立ち寄ろう
「樹氷」を見た後は、レストラン、売店、休憩所などがある山麓駅でゆっくり過ごすのも楽しい。売店ではコーヒーやお菓子などのほか、地元のお土産も扱っている。また、山麓駅の入口にはおっとりした看板県の秋田犬「北斗」がいる。
レストランでは、麺類や丼ものを中心とした温かい食事がとれる。森吉山阿仁スキー場は山麓駅にしかレストランがなく、スキー場周辺にも店がないため、お昼時はかなり込み合う。また、レストランの営業時間は11時～15時なので、時間に余裕をもって行動しよう。
■ゴンドラに乗って無理なく樹氷を楽しもう
筆者が森吉山の樹氷を見に行ったときは、2回とも2〜3歳の娘と60代後半の母親と一緒に行ったが、3世代全員が無理なく楽しめた。
また、駐車場から山麓駅内はバリアフリーのため、車いすの方でも景色を楽しむことができる。ゴンドラに乗るだけでも樹氷は見られるので、寒さ対策をしっかりとして、無理のないプランで楽しんでほしい。
なお、午後は天候が悪化しやすいので、樹氷平には午前中に行くことをおすすめする。天候によってゴンドラの運転が中止になる可能性もあるので、森吉山阿仁スキー場のHPで運行情報をチェックしてから出かけてほしい。
森吉山阿仁スキー場 https://www.aniski.jp
●森吉山阿仁スキー場
【ゴンドラ営業時間】
9:00～16:00（登り最終15:00、下り最終15:30）
【ゴンドラ料金】
大人 ：往復2000円、片道1400円
小学生：往復900円、片道600円
【アクセス】
住所：秋田県北秋田市阿仁鍵ノ滝79-5
TEL：0186-82-3311
