人気マンガ『山と食欲と私』の中に、とりわけ好きな話がある。

 登山中に降り出した雨の中、道端に簡単なシェルターを作り、雨宿りを兼ねながら休憩するという話であります(第20話/夢見る大人ココア)。雨の登山といえば気が滅入りそうなものだけど、作中では温かい食べ物を作ったりして、雨宿りそのものを楽しんでいる。その様子がなんだかとてもいいのだ。

(作中ではもうひとつ重要な設定があるけど、それは今回の記事と関係がないのでスルーします)

 いつか真似してみたい。自分だったら、得意な缶詰を使ってどんな“CAN”P料理を作ろうか。そう考えていたところ、珍しい缶詰が手に入った。広島名物「汁なし担々麺」の素が入った缶詰だ。辛い料理だから元気が出そうだし、麺に混ぜるだけだから手間が掛からない。ひょっとしてこれ、雨宿り休憩にぴったりではないか?

■2000年代に登場した広島のご当地料理を缶詰で再現

ヤマトフーズ / 広島汁なし担々缶。麺は別に用意すべし

 お好み焼きやカキ料理など、広島には昔から知られているご当地料理がある。そんななかで、汁なし担々麺は2000年代に登場した比較的新しい料理であります。

 四川料理を参考に作られたと言われていて、山椒や花椒のシビれる辛さが特徴的。一度、広島の人気店で食べてみたら、半分ほど食べたところで舌の感覚がなくなってしまった。それくらいシビれた。

 そんな激烈な味が缶詰でも再現されているのだろうか? メーカーの人に聞くと「専門店で出てくる担々麺ほど辛くしていません。でも、そこそこシビれますよ」と、まったく参考にならないことを言う。

 本当は家で味見したいところだけど、今回入手したのは1缶のみ。なので、ぶっつけ本番で山で食べてみることにした。  

■蓋を開けると匂いがすでに辛い!

広島汁なし担々缶の中身

 フタを開けて驚いた。まるで地獄の血の池のように(見たことないけど)真っ赤な色をしているのだ。

 表面には油主体のスープが浮かんでおり、その下には肉そぼろが詰まっている。このままかき混ぜれば、スープと肉そぼろが混ざりあって“汁なし”の状態になるのだろう。

 立ち昇る匂いがすでに辛く、写真を撮っているだけで汗が出てくる。でも肉の量が多いから、肉のうまみもしっかり味わえそうである。