神奈川県の横須賀市と逗子市にまたがる鷹取山(たかとりやま)は、標高139mの低山である。東京からのアクセスが簡単で、明治中期から昭和初期にかけて、鷹取石を切り出した石切場として有名な岩山だ。

 ハイキングコースは、JR東逗子駅から神武寺(じんむじ)を経由して鷹取山に登り、京浜急行電鉄の追浜(おっぱま)駅に下りるコースが一般的。総距離は約4.5kmで、約2時間半ほどで歩ける初心者向けでありながら、ダイナミックな岩場に富んだ冒険心をくすぐる楽しいコースだ。見どころ満載なので、ぜひ鷹取山を気軽に楽しんでほしい。

■鷹取山の地質は

 鷹取山にある岩石(鷹取石)は、火山活動によって噴出された火山灰や火山砂などが凝集してできた凝灰岩である。凝灰石は比較的柔らかく加工が容易なため、様々な用途に利用されている。鷹取山山頂にある切り立った岩壁は、明治中期から昭和初期にかけて石材として採掘された痕跡だ。

 採掘された石材は家屋の基礎や塀、護岸などの建築土木用材として使われたが、昭和に入るとコンクリートの普及により、石材採取は次第に衰退した。その後、残された10m以上もある垂直の岩壁は、現在はロッククライミングのトレーニングに活用されている。この岩壁は鷹取山ハイキングコースの見どころの一つである。

岩壁を登るロッククライマー

■見どころ満載のハイキングコース

 このハイキングコースはアップダウンが緩やかな気軽に歩けるコースでありながら、見どころが満載だ。これから見どころを5つ紹介する。

●見どころ1 大岩が点在し、冒険心をくすぐる楽しいコース

 鷹取山の地質により、このコースは岩が多いのが特徴である。大岩の間を歩いたり、鎖を使って岩場を登ったりする登山道があり、冒険心をくすぐるコースだ。高度な技術は必要ないので、ファミリーでも楽しめるが、雨の日は岩が滑りやすくなるので十分注意してほしい。

大岩の隙間を歩く登山道
鎖を使って岩面を登る登山道  

●見どころ2 歴史を感じる、こんぴら山やぐら群

 鷹取山に登る途中に、一辺が約1メートルの小さなやぐらが20か所あまり並んでいる場所がある。やぐらとは横穴式の納骨窟や供養堂のことであり、このやぐらは鎌倉時代後期から室町時代にかけて築かれたと推測される。やぐらの中からは、かつて複数の骨容器や土器、写経石などが見つかったというが、今は何も残っていない。歴史を感じる場所なので、ぜひ立ち寄ってほしい。

こんぴら山やぐら群